犬ノ礼
安良巻祐介
瞑目した同じ顔の童子が何十人と列を作るただっ広い堂、列の先にあるのは何かと見やれば、祭壇と、くしゃくしゃにくたびれた犬のような塊だった。なんであんな気味の悪いものの前に並んでいるのか、さっぱりわからない。祭壇の前に来た童子は、一礼してそれを一撫ですると、血を吸われたようにしゅうと真っ青な顔になって、向こうの闇の中へ駒の如く倒れてゆく。それを何度も何度も、延々と繰り返している。もう何人の童子が闇の向こうへ消えて行ったか知れない。自分が列に並んでいるわけではないけれども、恐ろしくてたまらないのは、童子が一撫でする度に、そのよくわからない何かが、大きくなっていくように思われるからであった。…
犬ノ礼 安良巻祐介 @aramaki88
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