エピローグ 異世界からの手紙 ~Re:Start from Asgard~(Cさん視点)
本間君たちが、旅立ってから一ヶ月が経った。
前もって、話を聞いていたとは言え、目の前で知ってる人が消えるのは、何とも言えない気分だった。
彼らと仲の良かった職員のなかには、三日ほど呆けてたものもいた。
「C院長! リア充たちから手紙ですよ!」
ゼエゼエと、慌てて院長室に駆け込んできたのは、言語聴覚士の木下だ。
「住所読めねぇええ」
「あ、こらこら、俺宛だろ? その手紙」
目の色変えて、木下が封を切ろうとしてたので、慌てて止めた。
「な、何て書いてあるんです。院長!」
「わ、近いぞ! ちゃんと読むから、離れろ、木下」
ふぅふぅ、と興奮気味な木下を何とか引き離すと、俺は手紙の封を切った。
ーーー
『C院長、職員のみなさま、病院のみなさまへ
僕たちがアースガルドに来てから、一ヶ月が経ちました。
言葉がわかなかったり、生活習慣が違ったり、身分制度があったりと、いろいろ大変です。
一つだけこの一ヶ月でわかったことがあります。
それは言葉がわかなくても、見た目が違っていても、身体や心の痛みは同じだってことです。そちらと同じような理由で、傷ついた人たちがたくさんいます。
僕たちはできることを、できるだけ、アースガルドで活かしていこうと思っています。
どうかみなさま、お元気でお過ごしください。
本間 浩
遠野みゆき
荒井さよこ』
ーーー
わざわざ手紙をくれたことがくすぐったかった。
俺は笑みを浮かべそうになるのをこらえて、
「ふん、元気そうだな」
と、吐き捨てるように言った。顔がにやけてないか不安だ。
俺は木下に手紙を渡すと、掲示板に貼っておくよう指示した。きっと患者さんたちが、先を争って読むだろう。
「やったあ! 貼っておきます!」
木下が手紙を奪うようにして、部屋から出て行くと、俺は机上に置いてある写真立てを手に取った。
その写真は本間君たちが退院した時に、玄関前で撮ったものだ。
そこには患者さんも職員もみんなが手を繋いで写っていた。
(つづく………?)
小さな丘の上の病院物語 〜眠り姫ドクターと僕が異世界に転居したわけ〜 なあかん @h_mosa
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