#ネタ将がポエ将

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「駒が光る……うーん、駒が躍る夜に……」

 美鉾がスマホを観ながらぶつぶつ言っている。将棋に関係することだとはわかるが。

「どうしたんだ」

「なんか、みんなが急にポエム読み始めたんです。私も参加したくて」

「ポエム?」

「ポエ将っていうものもあるんですよ」

「はあ」

 もう、将棋ファンのポテンシャルには驚くしかない。そのうち、エスペラント将やハッカー将も出てくるに違いない。

「でも、将棋ネタって詩みたいなものかも、と思うんです」

「そうなのか」

「もっといえば、将棋だって。棋譜という言語で、語り合うんですから」

 もはや、わかるのかわからないのかもわからない。

 とにかく、最近の美鉾は楽しそうなので、それでよしとする。

「あんまり夜更かしするなよ。僕は明日に備えて寝るよ」

「あ……いよいよですね」

「いよいよ、なのかなあ」

 そうなのだ。ついに、三段代表として新人戦に出場することになった。もしお互いに負けないと、準決勝で福田さんと当たる。まあ、強い四段五段がいっぱいいるので、可能性は低いのだけれど、可能性があること自体が初めてなのだ。

「ちゃんと、当たる気がするんです。そういう運命だって。だから、明日はきっと勝てますよ」

「そうだといいなあ。うん、おやすみ」

「おやすみなさい」

 不思議と、緊張はしていない。ぐっすり、眠れるような気がする。

 布団にもぐりこんで、ちょっとだけ、スマホを見た。



〈mihocall

勝負を前にして棋士も駒も眠る。ネタ将は眠らない。 #ネタ将がポエ将〉

 

 


『僕の妹はネタ将』 完

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僕の妹はネタ将 清水らくは @shimizurakuha

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