第23話 氷の剣振り回すのは難易度が高い

城内にあるとは思えないほど広い訓練場の一角を借りて稽古をつけてもらえることになった。

魔力の現出が最近だったらしいレオンと一緒に手袋をはめて並んだ。


目の前に立つ筋肉…もといエリアスの指導の元、氷の剣を思い浮かべる。


手元に流れていく力を認識した直後、冷気と異様な金属の鳴り合う音が響いて、目の前に剣が現出した。

剣を出しただけなのに冷気で空気中の水蒸気が水やら氷やらに変化してラスボスの登場感を醸し出している。


うん、幸いにも第一関門とされる魔力の現出は難しくない。



「フローラさま…その大きさのものはフローラさまには難しいかと」



遠慮がちにエリアスが教えてくれるが、そんなこと言葉に出されなくたって目の前の大剣が振り回せないことぐらい察せる。

白銀の氷でできた冷気を放つ剣を見上げる。私が出現させた剣はバカみたいに大きい。


柄を持とうとするが、私の腕ほどに太い剣の柄を握れるはずもなく。


背伸びして指先を引っ掛けたせいか、異様に重い音を立てて剣が傾いた。

慌てて飛び退いたレオンが笑顔を取り消して怒鳴りつけてくる。



「危な?!!これ、消してください!!」



狐の仮面のような笑顔はレオンのアイデンティティだと思っていたが、残念ながらその笑顔は秒でかなぐり捨てられた。


まあ一言二言しか発しないモブの実態なんて知らないから狐の笑顔は腹黒時専用とか?

もしかしてさっきの狐笑顔は歓迎の笑みのつもりだったの?かなり凶悪な笑顔してたけど。


思わず剣ではなくレオンを眺めているとエリアスから指導が入った。



「フローラさま、魔力放出をやめてください。魔力の供給がなくなれば剣は消えます」

「え?そうなの?」



魔力放出のために開いていた手を握り、放出を止めると大剣にいやな亀裂が入った。


亀裂の入った方向的にエリアスの方ではなく私たちの方に折れてくる気がする。



「嫌な予感」

「予感でのんびりするなっ!」



亀裂が広がってエリアスが慌てて大剣の柄部分を握るも割れた刃先の部分がこちらに降ってくる。


咄嗟にレオンが私を抱えて退避してくれた。

目で追うのがギリギリの速度で動いていたから恐らく魔力を使った身体強化をしたに違いない。


うん、ここにいたら普通よりは強くなれそうだ。



「あ、ありがとう」



身体強化のせいかキラキラとした氷の魔力の放出をまといながらレオンは深いため息をついた。

もはや笑顔を取り繕う気すらないらしく半眼で私を見ている。



「魔力が多いのも問題ですね」



ようやく消えた氷の大剣があった場所には大きな穴、剣先が地面に刺さっていた場所だ、ができてしまっていた。



「なんていうか、ごめんなさい」

「とりあえず休憩にしましょう」



大騒ぎになってきた訓練場からレオンのエスコートで退出させられた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る