人間ドラマ、情景描写、謎解きで読ませる上質なホラー

まずは、とにかく面白くて続きが気になり一気に読み進めました。
 物語は新卒の主人公、川野が引っ越してきた築年数の古いアパート「水源荘」を舞台として始まる。ペットのイモリ、ビリーの水槽からメダカが消えるという小さな怪異がやがて身の毛もよだつ恐怖へと繋がっていく・・・
 物語の筋書きが見事で、日常に潜む恐怖が肥大化する様に目が離せなくなる。人生を俯きながら生きているように思われる主人公が行動を起こし、怪異の謎に迫り、戦う様は思わず共感できた。
 川野、奇妙な隣人の沼崎、バンドに夢をかけるイズミはそれぞれに苦悩を抱えている。彼らの人生模様が平行して進んで行くのも面白い。
 映像が目に浮かぶようなリアルな情景描写と細やかな心理描写が素晴らしく、文章も非常に読みやすい。ラストの展開はスピード感、緊張感があり、まさに手に汗握りながら読みました。読後感も妙味があり、良かったです。
 大変素晴らしい作品でした。商業本としても充分売れるのでは、という上質な作品です。ホラー好きな方にぜひ読んでもらいたいです。