エピローグであり、プロローグ
一悶着の末王子は、ミラに膝をついて求婚した。手に硝子の靴を持ち、それを彼女に差しだしながら。
彼女は最初こそ渋っていたものの、最後には泣いてその求婚に応じた。
―――今度こそ、家中に歓声と祝福の声が響き渡った。
その後はというと、たくさんのことがあった―――母と姉が捕まったり、王子の婚約が瞬く間に広がったり、たくさんのことが一度にありすぎた―――ので、どうなったかなんて覚えていない。
とはいえ、母と姉はもうミラと会うことは出来ないということは、なんとなく理解できた。当然だ、身内だが王子とその婚約者に害そうとしたのだから。軽い刑罰では、きっと済まないと思えた。
だからこそ、言うことがあるとすれば。
―――あの子はもう、幸せになれるということだ。
涙が一筋、零れ落ちていった。
(あれ……思い出したから……?)
泣く資格などないのに、何故か泣きそうになる。歩みを止め、私は袖口で涙を拭った。
けれど、それは留まることを知らず、むしろどんどん溢れてきた。
泣きそうになるのを堪えながら、私は府に落ちたような感覚を覚えた。
(……あぁそうだ、私はずっと……)
そう―――彼女にどんな形であれ、謝りたかったのだと。この先教会に行くであろうその前に、しっかりと謝りたかったのだと。
「…………っ!」
唇を噛みしめ、私は小さく泣いた。嗚咽が漏れないよう、手で口元を押さえながら。
涙は今・・・止められそうに、なかった。
―――その時だった。
「アルター男爵令嬢の、アリア様ですね?」
一人の男性が、私に声をかけてきたのは。
呼ばれたのを知った私は、慌てて涙を拭いさると声のする方へと向き合った。
その男性は、容姿からするに高位の貴族のように見えた。なぜなら着ているもの全てが、品質のよいものばかりだったからだ。
「な……んでしょうか……。」
戸惑う私に彼はニッコリ笑うと、片膝を地につけて・・・さらにこちらが混乱させるようなことを言ったのだ。
「どうか、わたしと結婚していただけませんか?」
―――と。
End.
いるはずのない魔女の持つ、罪と罰。 薄紅 サクラ @Ariel191020
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