出会い、そして―――幸せの瞬間

 ・・・たくさんの女性が、硝子の靴に足を通した。下は成人した少女から、上は独身の女性まで。その数は、何千人にも及んだ。しかし、どの女性もその靴に合う人はいなかった。

 当然だ、王子の持つ硝子ガラスの靴は―――同じ年頃の娘たちにしては、。ぴったりと合う女性のいる方が、それこそ可笑しいというものだ。

 靴の合う女性探しは、数週間にも及んだ。王子の一行は、王国の隅から隅まで探した。それでも見つかることはなかった。




 わたくしの家でも、それは行われた。

 姉が試しに硝子の靴を履こうとするも、小さすぎて入らない。私も一応やってみたが、やはり入らなかった。

 家にいたメイドたちも、全員その靴に足を通した。けれど、サイズの合う者はいなかった。

 ―――最後に、ミラが硝子の靴に足を通した。それを二人は妨害しようとしたものの、家の従者たちが阻止し、王子と一緒にいた兵士たちに拘束され、行動を制限された。


 そして―――ミラが足を通した途端、それはようやく主のもとへと帰ったかのように、ぴったりと足に嵌まった。

 ようやく硝子の靴の持ち主に出会えたことで、兵士たちも・・・そして王子も、その表情に歓喜の色が灯った。




 しかしその前に。

 まず、母が暴れだした。兵士たちの手を振り払い、従者たちを押し退けると、近くにあったナイフでミラを殺そうと、目を血走らせながら走って近付いてきた。

 しかし、王子に手を捕まれ、腕を捻り上げられ、今度こそ兵士たちによって鎖で拘束された。

 ・・・ナイフはというと―――運がよくなかったか否か。なんと、母を取り返そうと、兵士たちに近付いた姉の両目を切ったのだ。

 姉の悲鳴に似た絶叫が、家中に響き渡った。

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