クリスマスの夜(2)
「んじゃあ、次はセン達に会いに行くか。」
次の世界へのドアを生成し、ドアノブに手をかける。
「賞金稼ぎの世界へ!」
ガチャ…
ー賞金稼ぎの世界、コンテナ倉庫ー
「っと…」
「凄い…周りが荒野みたいね…」
「ここじゃどこもそうさ。何せ数多の賞金稼ぎが常日頃賞金を奪い合ってる世界だからな。」
「大丈夫なの?セリド連れて来ちゃって…」
カトラは少し不安な顔を見せた。まぁ無理もないか、なんせ賞金稼ぎがはびこる世界なんだからな。
「ここに住む知り合いの賞金稼ぎがいる。そいつらなら快く入れてくれるだろうさ。んじゃ行くか。」
ゴン、ゴン!
「誰…?」
「俺だ、ラルス!ラルス・マーセル!」
カチャン。
コンテナの鍵が開いた。
「本当にラルスなのね?それにクロウも…後二人は?」
「あぁ、俺の嫁と娘。」
雄子と同じ反応された…
「へぇ…結婚したのね。さぁ早く上がって。」
「お、おじゃましまーす…」
「妻のカトラです。以前はラルスがお世話になったそうで。」
「よろしくカトラ。私のことはセンでもミスズどっちでも呼んで構わないから。」
一通り自己紹介が終わったところで俺はここに来た理由を話した。
「今日なんでここに来たかっていうのは、クリスマスの今日にセリドを連れてどこかに行きたいと思ってね。それで以前行った世界をまわっているんだ。」
「なるほどね。…で、クリスマスって何?」
「へっ?」
まさか…センはクリスマスを知らんのか!?
「ミスズ、クリスマスというのは年に一度12月25日に行われる祭りのようなものらしいんだ。子供達がその日の夜に自分の欲しい物が貰えるとか聞いたことがあるけど…」
流石はサノウ。博識だな。
「まぁこんな殺伐とした世界だから知らないのも無理はないよ。」
「欲しい物…か…なら高品質な砥石が欲しいところね。最近刀の切れ味が落ちてきたところだし。」
いやいくらなんでもサンタはそれくれるのか…?
「そういや俺、センと最初に会った時は敵だと疑われて戦ったことあるけど、あの時は本当に桁違いの強さだったな。」
「ラルス様が手を挙げて降参って言ってましたね。」
「なぁ無理な話かもしれんが、あの時の続き…やってもいいか?」
「いいとも。久々に腕が鳴るわ。」
ーコンテナ外ー
「お前、高速移動しすぎてカトラとセリドに当たるなよ?」
「私がコントロール不能などでも起こすと思う?」
お互い配置に着いて構える。
「ほら~セリドも応援してね~」
「それでは、始め!!」
シュン…
やはり最初は神速の速さで消えるか…
「見切った!」
ブゥン…
「残像!?まさか…」
「とりゃあ!」
ガキン!!
俺が斬ったのは残像だったが上から来ることは瞬時に予測できた!
「やっぱただ見切るだけじゃ通用しないか。」
『ここは手を変えていきましょう。』
「さぁ、ラルスはどう来る?」
「どう来るもこうもねぇ、全力でかかるだけだ!!」
センはまた神速の速さで撹乱させようと動き始めた。
バシュ!
「そこか!」
ガキィン!カァン!
武器が弾かれたがこれで良い。ドメイクを倒した時と同じシチュエーションだ。
「うぉらぁ!」
ブォン!
「体術で仕留めようと?」
「後ろにもご注意を。」
ブゥン!
「はっ!」
ヒュッ…
「あれ…?」
クロウの不意打ちの体術も避けられた!?何で来る方向が分かったんだ!?
「悪いけど、私も同じような手(トリック)を何度も使ってるからね。」
呆気に取られてる間にセンは俺の後ろにいた。
カチン……ドスッ!!
「うぎゃっ!?痛ぇ!?」
「これで勝負あり。」
初めて会った時と同じやられ方された…しかも峰撃ちでトドメを…
「またしても惨敗でしたね。ラルス様。」
「でもお互い凄く良かったよ。」
「くあ~…やっぱセンには当分勝てる気がしねぇなぁ…」
今回センのフロート能力を使わずして負けたからな…
「時間あったらまた来てね。いつでも待ってるから。」
「あぁ、次はアザ1つ作ってやらぁ。」
「期待してるわ。」
俺達は賞金稼ぎの世界とも別れ、自分達の世界へと帰った。
ーその夜ー
「んで…そのうなじのアザはセンにやられたのか?」
「このアザ付けられたの二度目なんだよ!!お前も一度戦ってみろ!!パワーのお前じゃ絶対勝てないから!!」
「なるほどな。今度訪れてみるとするか。」
クリスマスパーティの最中、俺はセンに惨敗したことをドメイクに話していた。
「ローストチキン、焼き上がりました。」
「うぉ~!旨そうだな!」
クロウが焼いてくれたローストチキンをみんなで分けあって食べた。
「なんだかんだいってこの賑やかさは消えてくれなさそうだな。カトラ。」
「ええ。こんなことつい二年前までは無かったから…何だか凄く嬉しくて。」
「これからもセリドとみんなでずっと一緒だぞ。」
「うん。ずっと一緒よ、あなた…」
終わり。
「セリド様、私達も「あの世界」へ向かうのですか?」
「女の子達がやられてるのを黙ってみてろって言うのレイヴ!?」
「その正義感、お父様譲りなのですね。」
「お父さんに似てるって良く言われるけど…」
「とにかく私達も直にあちらへ向かいましょう。もっと悲惨なことになる前に私達が止める他ありません。」
「うん…でも何か「あの世界」に感じたことのある「感覚」があって…」
「感覚?一体どのような…」
「なんというか、安心するような…落ち着くような…」
「もしかすると私達の他に潜伏者が?」
「でもそれはいずれ分かる。行こう!マーセル家の名に掛けて!」
「承知致しました。」
ロスト・メモリーズ―聖夜の記憶― Next @Trex
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