敗戦国、しかも種族も違う……人間の姫。彼女が、魔王の元に生贄同然に差し出されたところから物語は始まります。
諸々の内容はネタバレになるので書けませんが、魔王といい姫といい、出てくるキャラクターがいちいち可愛らしく、応援したくなる側面を持ち合わせています。(例外はいますが
シリアスとギャグのバランスも素晴らしくいいですし、ラブコメとしてのテーマも一貫しているので安心して読めます。面白いです。
テーマはずばり、「セ〇クス」!
頑張れ姫!「セ〇クス」を成すその日まで。
頑張れ魔王!「セ〇クス」を「セ〇クス」にするその日まで!
……こんなセ〇クス連呼してよかったんですかね? もしまずかったら遠慮なくおっしゃってください!
年の差、身分差といった「差」に目がないもので、こちらの種族を飛び越えたお話も楽しく読ませていただきました。
当事者ふたり(夫婦)の心理描写や行動、発言の描写もさることながら、彼らを取り巻く環境や人物(人じゃねえ!笑)も魅力的でビジュアルを想像しながら読み進めるのがとても楽しかったです。(私の想像力が乏しく、おおかたがエジプトの壁画のようなイメージばかりでしたが;)人間以外の種族が当たり前に闊歩する世界を想像してはほくそ笑んでおりました。
また、人間よりも理知的で情に厚い魔族たちの姿を見ながら、ほっこりしつつも、ああ、人間は弱いからこそ恐怖のあまり、相手からの攻撃を恐れて過剰に攻撃してしまうのだろうな、と寛容であることの強さについても考えさせられる部分もありました。強いから寛容でいられるのか、寛容だからこそ強いのか、という点については、魔王と王妃、周囲に居る者たちがひとつの答えを投げかけてくれたように感じます。
アンナが姫として妃として気丈に振る舞っている所などもとても健気で惹かれます。
なお、作中でセックスセックス言うてはりますけど、こちら、相当な純愛でございます。いわゆる両片思いのすれ違いに見守る側としてやきもきしつつも、滑稽な思い違いに笑わせてももらいました。そして純粋で初々しい想い合いに、私も遠い昔に忘れた何かを取り戻せたような気がしました(気のせい)。
幸せな未来が確定しているであろう二人ですが、未来にもふりそそぐほどいっぱいの幸あれ、でございます。
魔族の王であり竜人である魔王様と、人間のお姫様である王妃。
二人は和平のための結婚で、愛のない結婚――のはずだったけど、本当はお互いのことを深く愛しています。
だからこそ、二人の距離はなかなか縮まりません。
両片想いです。みんな大好き両片想いに陥ってしまったのです。
大好きな夫と幸せな夫婦の営みを望む王妃、でも魔王は弱く脆く儚い人間である王妃を傷つけたくない。彼女を壊したくない――その一心で夜の生活はなかなかうまくいかず。
基本的にはコメディなのですが、じんと来て、ほろりと来て、切なくて、早く結ばれますように……と祈らずにはいられません。
頑張れ頑張れ魔王様。アンナはあなたが思うほど弱くはないのよ。そう言って背中を撫でてさしあげたくなります。