第32話 リメイク

 オーナーの手紙が読まれて1か月、退院の日を迎えた。

 ずっと悩み考えて、私の心は決まっていた。

古山先生の精神医療に対する絶望にも似た叫びに共感した事が決め手となった。

 愛情溢れる家で育った人も、大金持ちの家で育った人も、精神を病む。

 もし神様がいたら、神様の目には全ての人類は不完全で、みんな病気なのだ。

 死ぬ確率も100%だ。不公平はない。

愛する人を失い、自然災害に遭い、またいじめや、虐待で心に傷を負うことも避けられない。


 [古山先生、私は3人の訪問を通して自分の過去を知り、癒されました。私はリメイクshop青山は心のリメイクの場所でもあると思うんです。最期のお別れや感謝を伝えたい人達のお手伝いが出来ればいいと思うんです。そして、それによって、生きている人の心が軽くなるのであれば、少しは精神科の患者さんの薬の量が減ると思うんです。今ある命が全てじゃない。希望を持って生き抜く力にして欲しいです。私もお父さんを助けたいです。先生、お世話になりました。また来ます]


 [みどりさんなら出来ますよ]


 古山先生は笑顔で送り出してくれた。




 [みどりさん、お帰り。早速、面接して欲しい人がいます]オーナー、いや父が玄関で迎えてくれる。


 [場所は君と雇用契約を結んだあの喫茶店です。面接の相手は藤澤さんの娘さんです。気を付けて行ってらっしゃい]


 [行って来ます。お父さん。]

 

 喫茶店に向かう私のバックには鈴子からの印鑑と、藤澤からの財布が入っている。

 そして、ミナから貰ったMのネックレスが胸元で揺れていた。  



                   完

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リメイク 星都ハナス @hanasu-hosito

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