5
この物理的干渉しない殺気が漂っているみたいなそんな鋭い視線。
「翔兄、どうしたの? 顔色悪いよ?」
「あ……いや、なんだかここ最近、朝学校に向かう前に誰かの視線を感じるんだよな……」
「ええ……それってナルシスト?」
「いや、そういう意味じゃないから……。なんで、そうなるんだよ……」
きっと気のせいだ。そう毎日のように思っている。
だが、その視線が誰なのかは全く知る由もない。もしかすると、電柱の上にいるカラスやハトなのかもしれないのだ。
隣の家では二階の部屋の陰からいつものごとく、制服に着替えて今にも高校に向かおうとしていた少女の姿があった。
いつもは学校に余裕を持って登校しているのだが、今日に限っては寝坊してしまい、運よく外の様子を見ることができた。
自分と同じくらいの生徒が、月曜日はいつもこの時間帯に家を出ていることは把握済みである。今日もまた、少年は車で移動する姿を目にした。
そして、いつもその家は毎朝騒がしくてにぎやかな家族である。
その中で同じ学校に通い、同じ学年で隣のクラスの少年。
少女はそんな彼とここ何年かは話した記憶が無い。
だが、少女は。
片思いしている少年を睨みつけてしまうのだ。自分では分かっているつもりなのだが、自分の気持ちに素直になれずにいる。
そうしているうちに時間が経っていく。
「くっ……なんでいつもそうなのよ」
そう言って部屋を飛び出した。
一階に降りると、食パンを加えて、自転車のキーと家の鍵を持って家を出る。
自転車を車庫から取り出し、かごにバックを入れると漕ぎ始める。
————ああ、なんでこうなっちゃうのかな? それにしても登校時間まで約二十分、間にあうといいんだけど……。
「って、なんで、お母さんは今日に限ってどっかに出かけちゃってるのよ!」
少女は顔を赤くしながらペダルをこぎ続ける。
この女子高校生は何と言えばいいのか色々とあり、簡単には言うことは出来ない。
四兄妹の日常 ゴリラ・ゴリラ・ゴリラ @kouta0525
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。四兄妹の日常の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます