蜂退治

 これは那須家の元祖の話と言われている。


 昔、八ヶ平というところは、桜井の里といわれておった。

 その宿のはずれにはいい枝ぶりの松があってな、旅人にやさしい木陰をつくっておった。

 その松の木に、一匹の蜘蛛がちょこちょこと遊ぶように巣をかけていた。


 あるいは本当に遊んでいたのかもしんねえな。

 それを見つけたでっかい蜂が、蜘蛛を狙ってやってきた。

 蜘蛛は逃げきれなくてな。


 あわや! というところで須藤権頭貞信すどうごんのかみさだのぶっていう大変な方が蜂をやっつけてくれた。

 大変な方、というのは、貞信は八溝山やみぞさん岩嶽丸いわたけまるという悪漢を退治する命令を受けてここまでやってきたんだ。

 蜘蛛はすぐさま本性を現した!


 その正体というのはなんと、乙姫様だったんだべ!

 助けてくれたお礼にと、那珂川なかがわの竜宮まで招いて、たいそうもてなし、次の朝すぐに二本の鏑矢かぶらやを持たせて送り出した。


 貞信はその鏑矢一本で岩嶽丸を退治し、残りの一本は貞信の子孫、那須の与一が舟の上の的を射るのに使ったっちゅう話だ。


 そして……桜井の里は、貞信が蜂を退治した場所だから八ヶ平はちがたいらと呼ぶようになったと。



 了

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日本! 歴史物語 れなれな(水木レナ) @rena-rena

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