高校生の日常
あの後、そこそこに新生活に必要と思われるものを買い、一行は俺の家に戻ることとなった。夕食は零の手作りでかなり美味しかったことに失礼ながら非常に驚いたのを鮮明に覚えている。
あれよあれよと二人の女性に圧倒されながらの休日も過ぎ去っていった。
三連休が終了しての、今日は火曜日である。零は午後から佐藤さんとともに転校するところへ手続きに行くとかで絶賛爆睡中であった。まぁ、現在朝の5時であるから無理もない。
なぜ、朝5時なのかというのは、とある方々との早朝ミーティングがあるからである。はっきり言って進んで参加しようとは思わないのだが……。料理は苦手なので、車に学校で使う教科書や専門書、バイトのための荷物を入れて家を後にする。
この時期の朝というのは、若干肌寒いが俺としては好きな感じである。ここら一帯は学生中心のため、この時間から起きている人間というのはまぁいないだろう。その事を思いながら、車を走らせて学校の近くのコンビニへと朝飯を買いに行く。
ピロロローン
「おはようございます。いらっしゃいませ~。」
女性店員の声が響く。
この時間帯のコンビニというのは、人はおらず、商品もあまりまだ揃っていないことが多いというのは経験上分かっているのであまり期待はしていない。しかし、おにぎりやパンを2つ持ち、レジでホットカフェオレを注文する。
「あ、これも一緒にお願いします。あと、ホットコーヒーも。」
「え、」
突然、後ろから声がし、素早く置かれた商品。すべてパン。だがしかし、この人物は俺の良く知った人間だった。
「お客様、ご一緒でよろしいでしょうか?」
「あ、はい」
店員も違和感を隠せていないようだ。クレジットカードを出し、支払いを済ませてその人物とコーヒーメーカーへと移動する。
「会長、どうしたんですか?俺なんかよりも稼ぎがあるでしょ、何個も会社にバイトに行ってるんですから……。」
そう、その人物は俺が所属し今日の早朝ミーティングなんかを持ち掛けた生徒会執行部の会長である。名前は、確か……白石 碧(しらいし あおい) 今春から高3の女子生徒。本来、俺の通う第一高校というのは個人主義的なところがあり、また自由な校風のため生徒会というのは存在はするが、特段機能しなくても何ら問題はないというところがある。まぁ、系列校との連携や決め事の関係から、メンバーや役職があるという程度でそんなカッコ良いものではない。
そして、この人は最優秀という枠から会長になった。小学校から神童と呼ばれる程に優秀であり、両親の遺伝子からか芸術やスポーツも群を抜いていた。しかし、それを面白く思わない人間はどの世界にもいるらしく、いじめ的なものに遭い、そこでこの学校にスカウトされたと……。
「私、お財布、車に置いてきてね。そしたら、凌駕君がいたからいいかなって思って……ね。」
「ビビりましたよ、いきなりレジ前で知らない手が出てきたんですから。」
「凌駕君でもビビることがあるのね。いっつも落ち着いている感じなのに。」
「せめてレジの前ではやめてください。」
「じゃあ、今度からは最初に声を掛けて買ってもらうわね。」
「いや、そういうことではないんですけど……」
はて、俺で遊びたいのだろうがどうも真意が掴めないというのはやりずらいものである。
コンビニを出ると、俺の車の隣にはLEUXSのRCFが枠線ギリギリに止められていた。朝の静寂にはとても合わない雰囲気を放っていた。高級感に満ちあふれた車体にその性能たるや、もう何も言えない。
「これ、凌駕君のでしょ?」
分かり切っているとでも言いたそうに質問を展開してくる。
「分かってて、こんなに幅寄せしてるんですか?」
「かっこいいなぁと思ってたら、ついそっち側に寄っちゃって。てへっ!」
今時、「てへっ!」なんて言わないっすよとは言えず愛想笑いするしかなかった。
適当男子高校生と年下彼女 越水ナナキ @koshimizu
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