モテ神様に無理難題!

ちびまるフォイ

自分では気づかないサポート

「我はモテ神。貴様のモテたいという強い欲求が顕現させたのじゃ」


「あぁ、モテ神様! どうかお願いがあります!

 非モテに生まれてしまったこの私めを、

 ジュノンボーイごときイケメンに作り変えてください!」


「やるのは簡単だが、条件がある」


「神様ってノーリスクで叶えてくれるんじゃないの!?」


「なんでお前神に対して上から目線なわけ。神ムカつくな」

「そう言わずに……」


「お前には2つの選択肢がある。

 モテモテになるが、寿命が短くなる。

 完全にモテなくなるが、寿命が長くなる」


「ハーフ&ハーフは?」

「ピザじゃねぇぞ」


男は悩み悩んで知恵袋に相談した結果、決断した。


「寿命が減っても構いません! モテたいです!」


「本当にいいのか?」


「歳をとってからモテてどうするって話ですよ。

 一番健康なときに、めっちゃモテるほうが良いに決まってるでしょう」


「では貴様にモテ力を授けよう」


モテ神の力により、設定ミスと言わんばかりに低かった

男のイケメン度合いがぐんと高まった。


「キャーー! 見てイケメンよ!」

「今の人、めっちゃかっこよくなかった?」

「ヤバイ! 超かっこいんだけど!」


男は街を歩くだけで、いい意味で後ろ指を指されるようになった。

待ち合わせに待っているだけでモデル事務所のオファーが止まらない。


「君、かっこいいね。うちの事務所に来てみない?」


「あぁ、そういうの、求めてないんで」


「もったいない。君ほどのイケメンは芸能界に入れるのに」


芸能界なんて一番避けるべき選択。


神の力でブサメンからイケメンにクラスチェンジしたとはいえ、

そもそもイケメンで生まれてきた芸能人に並ぶとどうしても陰ってしまう。


「フッ。一般でいれば、俺以上のイケメンが出ることはそうあるまい。

 井の中の蛙には井戸が一番適しているのさ」


「何言ってるかよくわからないけどカッコイイ!!」


イケメンになると、異性に困ることはなくなった。

店でも待遇は良くなるしイケメン割されたりイケメン用近道も使える。


ちょっと優しくすればたいていの女は目をハートになるし、

普通に生活していてもイケメン補正でやたら褒めちぎられる。


「ブサメン出身だと、変に思い上がることもないから外も中もイケメンってわけだ!」


たかが顔ひとつ。

されど顔ひとつ。


イケメンになるだけで、あれだけ切望していた恋人をなんなく作ることができ

ひいては結婚し家庭をもつまでにスピードゴールイン完了。


「ワハハハ! もう人生って最高だ……うぐっ!?」


イケメン生活を満喫していたとき、急に胸が苦しくなって病院に搬送された。

自分のレントゲン写真を見ながら、医者は暗い顔をしていた。


「これが今のあなたの体の写真です。ココを見てください」


「この影は……!?」


「なんかヤバイ病気です」

「アバウト……」


「いつどうしてこんな影が写るようになったのか現代医学ではわかりません。

 しかし、あなたのレントゲン写真に映っている数字は昨日よりも減っているんです」


レントゲンには「365」という形で影が映っていた。


「昨日は366だったんですか?」

「そうです、まるでカウントダウンですよ」


医者は頭をひねっていたが、すでに原因はわかっていた。


「こんなに早く寿命がくるなんて……!」


やっと幸せな人生を手に入れてこれからというときに。

残りの寿命が365日しかないなんてひどすぎる。


男は悩みに悩んで、ふたたびモテ神様を呼んだ。


「我はモテ神。貴様の望むことをなんでも聞くだけは聞いてやろう」


「モテ神様! どうかお願いがあるんです!」

「またお前か」


「やっと妻を持ち、人並みの生活を手に入れたんです!

 なのに寿命が残りわずかなんてあんまりじゃないですか!」


「それが貴様の選択した道だろう」


「こんなに短くなるとは思ってなかったんです!

 もっと、90歳の寿命が、89歳11ヶ月になるくらいかと思ってたんです!」


「クレームだけなら帰るぞ。ドラマの再放送があるんで」


「いいえ、寿命を伸ばしてほしいんです!」


「……いいのか? 寿命を伸ばす方を選べば、貴様の顔は不細工になる。

 しかも、これから生涯モテないことが確定するんだぞ」


「大丈夫です! すでに幸せは手に入れました!

 もうこれ以上モテる必要なんて無いんです!」


「よしわかった。では貴様をブサイクにするかわりに、寿命を伸ばしてやろう」


「やったーー! これでバラ色人生の延長だーー!!」


モテ神の力により男の顔は元以上のブサイクになった。

そして、神の力で制限されていた寿命は取っ払われた。



 ・

 ・

 ・


1年後、男の葬式はしめやかに行われた。


「去年はモテまくりだって、あんなに元気だったのにね……」


「顔が変わったとたん妻に逃げられたらしいわよ」


「そこから毎日不摂生な生活を続けたせいで死んじゃうなんて、怖いわね……」


男の遺影は元のブサメンで、幸せそうな顔をしていた。

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