虹のように色を変える、美しき短編小説

 読み始めから、最後へ。ここまで色を変える小説も珍しい。しかも、短編ときた。
 ある男性のもとへ、かかって来た一本の電話。相手は『あの』メリーさん。日本人なら知らぬ人もいないのでは、と言うほどの、有名な怪談である。ああ、最後に「あなたの後ろにいるの」で終わる、あの怪談を面白おかしく書いたんだな。それが最初の印象だ。
 その印象が変わったのは、物語の中盤だ。
 どうかわったか? それはとても私の口からなど言えない。もったいない。もったいなすぎる。これは自分で感じなければいけない類の感覚だ。そこに私なんかの感情が忍び込んだら、もったいない。
 ただ一つ言えるとすれば、冒頭でも言った通り、この小説は季節の移り変わりに色を変える木の葉のように、優しくゆっくり色を変える。それだけ。

 この小説に、何を感じたか。それについて私は、あえて、口を閉ざさせてもらう。どうぞ、自分で、感じてほしい。
 ああ、でも――言葉の乱れを許していただけるなら、一言だけ、私の感じたことを残す。
 
 ――そういうの弱いんですってば……!!

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