第6話 脱インキャ部は部活に入りますか?

 十分後やっと担任が教室へ入ってきた。

 それに気づいた、松井さんが振り返る。


「先生、遅いですよー」

「ああすまんな、すこし会議が長引いてしまった、それより二人とも今日何かあったか?」


 二人は見つめ合い、松井さんは、ニコッと、笑い振り返った。


(前までと違うな)


「何もないですよ! それより今日なんで残されてるんですか?」


 俺たちが座っている前の席の椅子を引き席に座る。

 

「いきなりだが、お前たち今部活は?」


 とても懐かしい響きだ、だけど、一年から部活なんて入った覚えない気がする。


「ないです」

「西山は」

「入ってないと思います」


 担任は頭を抱え大きく溜息をつくと、手紙を二枚前に出した。


「これをよく見ろ」


 渡されたプリントに書かれている内容は。


『ラノベ部 名簿 西山直哉 出欠欠欠欠廃

松井紅葉 出欠欠欠欠廃』


 なにやら名簿のようだ、上を見るとラノベ部と書いてある、とする時、俺は思い出した。


(ラノベ部に所属してたか)


「先生一ついいですか? 俺の名前のとこに廃ってあるんですけど」

「私のとこにも書いてある、ていうかみんな書かれている」


 担任は再び頭を抱えた。


「お前たち、ほんと何もわかってないな、お前たちが所属していた部活、ラノベ部廃部になったんだ 、まあ初回しか来てなかったから当たり前か」


 そして次は別のプリントを渡される。


「これは? 部活一覧表?」


 部活一覧表が配られ、二十ほどの部活が活動している。


「これ見てどうするんですか?」

「はあ、これを見ろ西山、第九項目だ」


 生徒手帳を取り出しルールが書かれているページを開き第九項目に目を向ける。


『部活は絶対に入部しとくこと、もし廃部した場合、一週間以内には別の部活に入ること』と記載されていた。


「と言うことは、今決めないといけないのですか?」

「そうだ、松井」

「そんないきなり言われても」

「私は、お前らに何度もこの話をしていると思うが? まあお前たちはその時生半可な返事ばかりだったから覚えてないだろうけど」


 たしかに言われてみれば聞いたような気もする。だけど今すぐ決めるのは無理がある。

 一応目を通してみたが、これといって入りたい部活はない。


(運動も無理だし、勉強系も無理だし、文化系も無理だし、入りたいところないな)


 少し沈黙が流れる、すると担任が変な提案を出してきた。


「まあ、最悪、入りたい部活がなければ、作るという手もありだぞ」


 作ると言っても全く案が出てこない、おそらく作っても今回同様、すぐ廃部になる気がするし、いっそ、作らないほうがいいのではと思う。

 俺はさっきからあまり喋っていない松井さんをみていると、こちらに気づき、ガッツポーズをしてきた。


(なんでガッツポーズ? もしかして、部活作るとか言いださないよな?)


 嫌な感じが的中してしまった、その瞬間、松井さんは挙手しながら立ち上がった。


「私、部活作ります!」


 鼻から蒸気が出ている、何かいい案を思いついたのか?

 体を横にしていた担任は体を起こし話を聞く態勢に入る。


「なんだ?」


 松井さんはこちらを向き、手を腰に当てながら案を発表する。


「私たちインキャじゃん?」


(てか、俺も含まれてるのかよ! まあその通りだが、だけどよ、もうちょいオブラートに包んで欲しいな!)


「そうだな」


(先生が納得してどうする!)


「それで私考えたの、脱インキャを目指す部活を作ろうと」


 内容を聞いた先生と俺は口がぽかーんと開き、シンクロする。


「えぇ」


 その反応を見て松井さんは顔を赤くして、席に座り俯いてしまう。


「まあ、いいんじゃないか」


 俺は少しフォローをすると、すぐに立ち上がり、「でしょ!」と指を指して言われた。


 部活作るのは別にいいんだが、気になるのは部員と顧問に関してだ。


「まあ部活はいいけど、部員と顧問はどうするんだ?」


 松井さんはそこまで考えていなかったのか、「あっ」と言って考え始めた。


「顧問については私が受ける、部員に関しては最低四人だ」


「なるほど、後三人必要なのか」


 そのことに間違いはなかったはずだが、松井さんが驚いている。


「ちょ、何でよ! 二人でしょ二人!」

「てか、俺は入ると入ってない」

「入らなきゃ仕方がないでしょ! ルールなんだから」

「じゃあ、一つ聞くが、その部活、具体的に何するんだ?」

「えっと、脱インキャ!」

「それを具体的に」

「う、うう」

「脱インキャの本とか買うのか?」

「それは......」


 二人の会話を見て、なぜか先生が笑い出した。


「何がおかしいんですか」

「いや、お前たち付き合ってるんじゃないかと思ってな」


 二人で先生に詰め寄り、シンクロする

「付き合ってない!」




 


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