第5話 色んなことが吹っ切れた
(なんか、まずいこと言ったか? どんどん視線が下にずれていってるけど)
「き、昨日『転ゴブ』読んでたよね?」
「いや、それは、あのまあ、はい」
「転生したらゴブリンになるなんて、そんな発想思いつくなんてすごいと思うんだけど、松井さんはどう思う?」
「ほ、ほんとそれ! そのゴブリンもとても可愛くて.....あ」
(テンションの上げ下げがすごいな、松井さんもしかしてラノベ好きなのか? 思い切って聞いてみるか)
「松井さんラノベ好きなの?」
「え、あ、うん、好きだよ」
(否定するどころか、ラノベが好きって暴露しちゃった!)
(さっきから妙にもじもじしてるな、松井さん)
「意外だな、松井さんがラノベ読むなんて、他にも『陽の実力者』とかも面白いよね」
「うんうん、あれ面白いよね! 最近書籍化したばかりで......)
(松井さん相当ラノベが好きなんだな、ていうかさっきより喜怒哀楽が激しいぞ? ラノベに関しての話をしてると目が輝いて、それ以外は俯いて何かゴソゴソいってるし、松井さんてこんなキャラだっけ?)
それからラノベの話で五分が経った。
「松井さん、俺より知識あるんじゃない?」
(否定しなきゃいけないのに、ラノベの話になると、知識披露しちゃう!)
そしてまた沈黙が流れる、話しては沈黙、話しては沈黙の繰り返しだ、ラノベの話が終えると二人は抜け殻のようだ。
なぜか普通の会話では言葉が全く出てこない。
(今なら言えるかな、昨日なんで俺のことを呼んだのか、本人は怒ってないっていってるけど、じゃあなんで呼んだのか)
おれは沈黙を裂くように話を始める。
「松井さん、なんで、昨日俺を呼んだの?」
松井さんは少しビックとし、少しだけ顔を上げて口を開ける。
「えっと、それは、あの時、教室で本読んでるのバレたじゃん?」
「うん」
「明らかあの本のこと知ってる顔をしていたから私のじゃないよって言いに行こうとしたんだけど......言葉が見当たらなくて」
松井さんは自分がラノベ好きってことがバレるのが嫌だったらしい、だから俺を引き止めて、口封じしようとしたらしい。
「なるほどね、別に気にしなくてもいいんじゃないか? むしろ俺ならと、友達になりたいくらいだし」
友達という言葉を聞いて松井さんは顔を赤くしてドンドン縮こまっていく。
(思っていた反応と違う、避けられると思ったのに、むしろ友達になりたいなって、中学ぶりに言われた気がする)
「あ、ごめ、ごめん、調子乗りすぎたな」
「う、うん、何ともないよ私でよければ、友達になってください」
よくよく考えると私の不安はとてもアホらしく感じた、中学の時、カバーもせずラノベを読んでいたらすごい、おちょくられて、バカにされ、それ以来あまり人と関わることがなくなった私だけど、西山君とは一生関わっていきたいと思えた。
私の心配、不安は吹っ切れて、先生が来るまでラノベを語り合った。
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