第7話 陽キャラの記憶力は化け物
「そ、そうか、それより顔近い、西山は早くどけ」
「あ、すみません」
(松井さんは!?)
「んで、今松井が言ってた、何だっけ」
「脱インキャ部です!」
「を作るんだな?」
確認するように目を見つめてくるが、目を合わせてはいけない。俺は入るつもりはないからだ。
「西山、お前はどうする?」
「俺は」
俺の声を遮るように松井さんが話に割り込んできた。
「西山君もおいで! 副部長にしてあげる!」
「ああ、そうですか」
(副部長って)
作るの決まったのはいいが、部員最低四人てことは、まあ俺含めたら二人。
「俺が入るとしてもあと二人必要ですよ? みんな部活に所属しています、誘える人なんて」
すると先生は再び生徒手帳を開き読み出した。
「部活の掛け持ちは可、とされている、ということは」
待井さんが挙手すると、授業かのように先生が当てる。
「仲良い友達を誘う! まあ、私には陽子ちゃんしか......」
すると誰かが教室のドアを開けて入ってくる。
「なんで、鷹野橋(たかのばし)が?」
入ってきたのは鷹野橋 陽子だった、俺の方を一度見るなり、すぐに松井さんに近づき、俺のことを不審者のような目で見てくる。
「陽子ちゃん、待っててくれたの?」
「まあ、せやなー、うちの話題が出てたから、登場しただけやで! それより紅葉、西山に変なことされてない?」
「う、うん、何にも」
「俺をどういう目で見てるんだよ!」
「一年の時の噂で変な奴って聞いてたもんで」
「ていうか一年一緒のクラスだろ!」
「え、そうやっけ? 西山影薄すぎ」
「うるせぇ」
そんなことより、と言って机に置かれているプリントを手に持つ。
「部活廃部しちゃったんや、やから今決めてるんか」
「そうそう、話が早いね、陽子ちゃんは」
「まあね」
二人が会話している間、担任は授業中に寝る生徒のように机に横になっていた。
(すごい態勢、いい歳してしんどくないのか?)
「それより、陽子ちゃん、お願いがあるんだけど」
「なに?」
「私たちが作る予定の部活に入って欲しくて......サッカー部が忙しければそっちを優先してね」
鷹野橋は一度考え込んだがすぐに答えを出す。
「いいよ、掛け持ちありやしな、紅葉がお願いするなら断れないし」
「ありがとう、陽子ちゃん」
「ちなみに、その部活の名前なんなん?」
(とうとう聞かれたか)
「脱インキャ部」
もちろん部活名を聞いた鷹野橋は、まじか! といった顔でこちらを見てきた、俺が頷くとすぐに松井さんの方を見る、松井さんは部活名気に入ってるみたいだが、他人からしたら、何じゃこれっといった部活だ。
「へー、そうなんや、ええやん、紅葉一年の時みたいにすぐ幽霊なったらあかんで」
「私生きてるうちは幽霊になりません!」
(俺らでさえ部活入ってたの覚えてなかったのに、全く関係ない鷹野橋が覚えてたなんて、やっぱり陽キャは記憶力も違うのか?)
視線を感じた、鷹野橋は横目で見てきた。
「なに?」
「何もないです」
「あと一人だね! 西山君にあと一人任してもいいかな?」
俺が入るのは確定らしい、まあいいや、入ってすぐ幽霊になるし。
「お、おう分かった」
「なら決まり! 先生決まりましたよ!」
西松ペアが協力すれば脱陰キャも夢じゃない @saragi040331
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