第4話 告白なんてされるわけない

 四限目が終わり、何事もなく、しれっと席を立つ佑磨を止める。


「待て待て、さっきの話のことなんだが」

「ん? 一緒にいたの何故知ってるかって?」

「そ、そう」

「あの時さ、トイレにいてさ、トイレから出た時、お前の後ろに紅葉ちゃんが追いかけてるのを見て、俺も後を追ったんだよ、ていうか俺も聞きたいんだけど、あの時の空気感もしかして、告白か?」


 告白という言葉が俺の頭にリピートされた。


「んんん、んなわけねえだろぉ」

「語尾が小さくなってますけど、どうされましたか?」

「こ、告白とかされてないから! てか俺が告白されそうな奴に見えるか?」

「見えん」

「即答かよ!」


------


 その後も視線さえ感じたが、何事もなく1日が終わる。

(帰るか、今日こそ、ob4やるぞ)


 カバンを持ちあえて、後ろのドアから出ようとした時、担任が現れた。


「松井と西山、この後少し残れ」


 俺はついつい、松井さんの方を見てしまった、松井さんもこちらに目を合わせていたが、目が合った瞬間目をそらした。

 すると後ろから笑い声が聞こえた。


「にひひ、直哉がんばれよー」

「な!」


 俺の肩をポンと軽く叩き俺を避けて教室を出ていった。


(松井さんと居残りか、ていうかタイミングよ! とりあえず昨日のことは思い出さないようにしよう、緊張するし)


(西山君と居残りなんて、もしかしてチャンス!?)


 担任が呼び止めてから五分が経っただろうか、未だ二人の会話はない。



(気まずすぎだろ、松井さんまた俯いてるし)


(なんか、気まずい空気だけど、屈するな私! 今絶好のチャンス、ゲームでいうフィーバータイム! 逃すわけにはいかない! 勇気を出せ私!)


 椅子に座りながら携帯をいじりつつ松井さんをキョロキョロと見る、あきらか不審者だ。


(なんか、机の下でガッツポーズしてるよ? 喧嘩になった場合に備えてんのか? てか先生早く来て!)


(がんばれ私! やれるよ私! ゆっくり深呼吸して気持ちを落ち着かせよう、すーはーすーは、行くよ! 私、せーの!)


 ガタン!


 その音で俺はあからさまにビックとした。音が聞こえた方を見ると松井さんが立ち上がって、こちらを向いていた。ゆっくりと歩きながら、小さな声で話しかけれる。


「あ、あの」

「! は、はい」

「昨日のことニャンだけど」

(盛大に噛んでしまった! でも西山君気づいてなさそうだし、セーフ)


 俺は緊張のあまり、口走ってしまい、謝罪の言葉と一緒に机に頭を叩きつけた。


「き、昨日はすみませんでした!」


 手汗がすごく、冷や汗もすごい、もうどうしたらいいか分からず、勢いで謝ってしまった。

 少し顔を上げて松井さんを見るととても困っているようだ。


「え、えっと、あのどうしたんですか?」

「あ、えっと、いや昨日のこと怒ってるのかなって」


 そして何故か少し間が空く。


(何この間!)


 もう一度松井さんを見ると、手と頭を左右に振っていた。


「なに、なに、なにも怒ってないよ!」

「え、本当ですか?」

「怒る要素なんてないもん、ていうか、私が謝らないとぉ」


 どんどん声が小さくなっていき、次第に下を向いてしまった。

 下を見た松井さんは俺の机に置かれている「一男」が目に入る。


「え、これ『一男』じゃん! 西山君これ好きなの?」


 松井さんの目は見ることができないくらい、輝いていた。


「え、う、うん、ていうか松井さん知ってるの?」


 その言葉とともに目の輝きが消えた。

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