啓示と欠落

安良巻祐介

 ある夏の日、世界救済の銘の打ち込まれた陀羅尼メダルを怪しげな露店で買った男の子は、その日から頭を青々と剃り上げ、顔には薄く経文様の化粧をして、何やら見えない者共と対話しては空を見つめて気合いを入れるなど、すっかり気が違ってしまった。

 彼はその後齢百まで生きたが、結局元に戻ることはなかった。

 メダルを売った天津坊主が手を尽くして探されたけれども、それらしき露店の筵の下から百年以上前の白骨が一つ見つかったばかりで、坊主の行方は杳として知れなかった。

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啓示と欠落 安良巻祐介 @aramaki88

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