たまたま出張の移動中に読んだということもあったのですけど、これほど一気読みしたカクヨム作品は珍しいです。それほど、のめり込んじゃいました。
ミステリーSFの傑作です。
SFの醍醐味っていろいろあります。遠い未来や未知の世界を想像すること、人間って世界って何だろうと考察すること、センス・オブ・ワンダー。そのなかでも知的好奇心を満たしてくれて、なおかつミステリーとしての謎解きの要素もきちんと組み込まれている小説は、いくつになっても私をわくわくさせてくれます。
でも、そんな小説を成立させるのはとても難しい。素人が簡単に手を出せる領域ではありません。なので、カクヨムでそんな作品を読めるとは思っていませんでした。でも、この小説は、そんな思い込みを打ち破る稀有な作品でした。
ストーリーはあまり説明したくありません。予備知識なく読んだ方がぜったいに楽しめます。概要はカクヨム運営公式レビューもありますから、そちらを見ていただければと思います。
カクヨム内では比較的ハードSFな内容ですので、様々な分野の専門的な知識が投入されていますけど、とても読みやすく分かりやすいです。SFを読み慣れていない人でもたぶん大丈夫でしょう。化学や物理の門外漢である考古学専門の大学講師の女性の一人称にすることで、読む人のハードルを下げることに成功しています。
個人的には、カクヨム発の『星を継ぐもの』だと思っています。ともかくオススメです。
考古学者の田辺は防衛省に勤める旧友からある遺跡の調査を依頼される。
その遺跡で彼女が遭遇したものは、宇宙人が作りだしたと思しき未知の生命体――パリキィだった。350万年前から地球に居たパリキィは調査班の面々に己を木星に飛ばすよう要求する。
一度はパリキィへの協力を約束した一同だが、時が経つにつれてある疑惑が持ち上がってくる……果たしてパリキィは本当の目的を語っていたのだろうか?
ロケットの打ち上げまで残り一週間、それぞれの手法で調査を開始した科学者たちは、やがて思わぬ真実に行き当たる。
SF的な設定を軸にして、謎多き生命体――パリキィの正体を探る変則的なミステリー。
作中に登場する七人の科学者たちはそれぞれ独自の価値観を持っており、どの人物もキャラが立っている。
彼らのやりとりは専門的な知見を交えつつも、ユーモラスかつ軽妙で読みづらさを感じさせない。
終盤で明かされるパリキィの狙いも意外性たっぷりで、SFとミステリーの融合に見事成功している。
(SF×ミステリー 4選/文=柿崎 憲)
プロローグを開いてからほぼノンストップで最新話まで読破しました。
本作は未知の存在に対して人類が如何に近づいていくのか、その過程が描かれる様はある意味シミュレーション、思考実験的であり、喩えが映画で恐縮ですがドゥニ・ヴィルヌーヴの「メッセージ」やロバート・ゼメキスの「コンタクト」、あと皆さんご存知「シン・ゴジラ」的な面白さに満ち溢れています。
それに扱うテーマは硬派ながら、若干(ここがミソ)門外漢の視点で描かれており、噛み砕かれた語り口調と身の丈の人物描写により入り込み易く、間口は決して狭くありません。
いやはや、次の更新が楽しみです。
どストライクです。
主人公は考古学者。日本の縄文時代に詳しい。そんな中、友人によって縄文時代のオーパーツ(人間の知識や技術では地球上にあり得ない物)の検査を依頼される。しかし、どんな検査をしても、製作年代は縄文時代だが、未知の物体だった。
それからしばらくして、主人公は他の分野の研究者たちと引合される。そして強烈な個性を持つ研究者たちと共に訪れたのは、そのオーパーツが発見されたという「遺跡」であり、そこには縄文人の骨まであった。しかし、驚くべきところはそこではなかった。その場所には、何と未知の生命体、しかも木星への帰還を要請する生命体がいたのだ。ここから、主人公たちの論理バトルともいえる応酬が始まる。
この未知の生物の話を信じるのか?
主人公の友人は利用されているのではないか?
ただの疑心暗鬼ではない。それぞれが、それぞれの分野から意見を述べ、それぞれの答えを出していく。そう、ここは人類が歩むべきところの分岐点だ。どの意見を採用するかで、人類のこれから進むべき道が示されていく。主人公たちは感情的にはならず、持てる知識を存分に発揮し、正しい道を選択し続けなければならない。SFでありながら、考古学の知識や検査などは本当に今現在、使われているものだった。炭素14年代測定法など、考古学をやったことがある人には垂涎のものだろう。その上で、論理が展開されていくところが面白かった。
さあ、貴方の前に、未知の生物がいます。どうしますか?
友好的で、貴方にもメリットが大きい提案をしてきます。
言葉遣いは、丁寧で、会話ができます。
人間より高度な知能と技術があります。
貴方の選択は、正しいですか?
是非、ご一読ください。