最終話 成り行きで群れた腐れ縁、もう戻らぬ時を思いながら彼の者は空を見ている

 世界が生命の芽吹かぬ死の土地と、生命溢れる世界に別れてから3年後・・・


「ふんふ~ん♪ 良く焼けたど~♪」


・・・・俺、トーマス・エルウッドは今ケーキ屋をやっている。一級品の粉が作れないのなら二級品の粉でも美味しく焼けるケーキを作る事にしたのだ。パンが売れなければケーキを焼けばいいじゃないと俺は考えたのだ


「せっかく最後の戦いでスッキリできる所をモヤモヤさせやがって、馬鹿野郎が」


 俺は即席で作ったバルトの墓に焼き上がったケーキをお供えした。墓の中には以前フランがもぎ取った手が入っている。墓石はバルトが死んだら名を刻んでやると言っていた、アダマンタイト製の墓石を使わせてもらった


「勝手に使ったからって祟るんじゃねえぞバルト」


 魔族に墓とか関係なんじゃないかい?と言ってフランには大分ごねられたが、アイツには死者をいたわる気持ちとかないのか


「俺、なんでアイツと結婚したんだろ?」


 たまに疑問に思う、フランはやっぱ物を言うのは火力さねとか言って、賭け事でたまに儲けては新しい銃を買いだめしてる、この間リボルバーとか言うものに大金をはたいていた。主にバッカス&カトラズと言う海賊時代からの馴染みの店に入り浸っている


「もとが海賊だし、しょうがないか。それにアイツよりはマシだ」


 バルディは何故か修行の末に転移魔法を会得し、バルトの友人のマミコの工房に入り浸り、怪しげな機械の開発実験に付き合ったり、無茶な魔法の鍛練をしている。死ぬつもりかと聞いたら、僕を殺せるのは我が死バルトさまだけですよ!っと言っていた


「現実を受け入れられなかったんだな、可愛そうに」


 こうして空を見上げているとバルトが今でも俺達を見守っている気がする


「安らかになバルト・・・」





























一方その頃、魔界では




「魔王様バンザイ!」「魔王様ぁ~!」「魔族に栄光あれ!」


 新たな魔王の就任式が行われていた


「皆の者!静まれ!」


「「御意!」」

 

 そこに新たな魔王が演説を始まろうとしていた。大量の魔族を前にしても憶する事に無い威厳を放っている。・・・と言うより就任式は二回目なので慣れたものだった。つまり”私だ”


「者どもよく聞け! また改め魔王に就任したシュエル・バルトである! その垂れた愚鈍な首を上げ、しかと目に焼きつけるが良い!」


 結局、またこの椅子に戻るのかと思いながら。面倒なので抵当にスピーチを切り上げ本題に入る


「皆の者、ついに人類との戦争を再び始める準備が整った! さあ、ともに楽しもうぞ!!」


「「おぉぉー!!!」」


 スピーチを終え玉座に座り、どういたぶってやろうか思考する


「くく…、どう料理してくれようか勇者共・・・、楽しませてくれよ。誰か魔鏡をもて!」


「はは!」


 魔鏡でさっそくあの三人がどうしているか見てみる事にしよう


「まずバルディは…、ラギと一緒になって兵器開発をしているのか」


「魔法の鍛練具も見受けられます。恐らく魔王様との決戦に備え修行していたのでしょう」


「まめな事だな、ヤツらしい。さてフランチェスカは、銃器のコレクションか、ヤツの能力を考えればこの数は厄介だな」


「皆、準備は怠っていないようですね」


「うむ、組織だった行動はしていないものの、少しは期待できそうだ。さてエルウッドは・・・む!?」


「こ、これは!」


 なんか見てはいけないものを見てしまった、エプロン姿で何をしているんだコヤツは


「ケーキを焼いているな…」


「しかも設備の整った専門店らしき建物を根城にしている様ですね」


「ヤツは農奴だったはずなのに、何を間違えてこうなった? 他の勇者と違って戦闘の用意している様子もない」


「剣を完全に捨てていますね。しかも隣の建物は女勇者の住まいですね、ベットが二つ・・・、結婚もされてる様だ」


「あの女と結婚するなど、どんな男だ? む?」


「あの勇者、焼き上がったケーキをどこかに持って行くようですね?」


「しばらく追ってみようか」


「かしこまりました」


 しばらくエルウッドの動向を側近と共に見ていると衝撃的は事実が明らかになる


「こ、これは!?」


「魔王様の墓だと!? あの勇者め!すでに我々に勝ったつもりでいるのか!」


「死なんと言ったし、また会おうとも伝えたのだが・・・、もしやあの一件で余が死んだと思っているのか・・・」


「魔王様のお力を目の当たりにしておいて、あれしきの事で魔王様がお亡くなりになると思う者など居ようはずがありません! 現に他の2人は準備を怠っていないではありませんか! きっとこちらを挑発しているのです!」


「それもそうなんだが、ヤツはバカだからな・・・。ん?上を向いたな、覗いている事に気づかれたか?」


「何かしゃべっている様ですね・・・・」


 唇を読むと確かにこう言っていた。安らかになバルト・・・と


「上等だ!出来るものなら余を安らかに眠らせてみよ!」


「魔王様ッ、落ち着いて! こちらの声はあちらに届きません」


「わかっておるわ!」


 丁度いいタイミングで、血の気の多い魔族が出陣の許可を求めて来た


「魔王様!もう我慢の限界です、我らに出撃のご命令を!」


「丁度いい! 今すぐに指定した場所にあるケーキ屋を襲撃してこい!手段は問わん!!」


「初陣がケーキ屋!?」


「不満か?」


「い、いえ…」


「よし、では行くが良い。悲劇のヒーロー気取りにどちらが主役か教えてやれ!」


「御意!!」


 まったく、勇者に期待してしまった私が愚かだった・・・・・




 END

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世捨て魔王と世に捨てられた勇者達は互いに何を見る? 軽見 歩 @karumi

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