第45話 最後の花火

 戦闘が終わり辺りは見渡す限りの黒い砂漠、ここに我以外に物の姿はなく、ただ黒い地面と明るい星空だけが有った


「アイツらめ、巻き込まれ死んだか」


「勝手に殺すな!」


 やかましい声を上げながらエルウッドが砂の中から這い出してきた。続いてフランチェスカ、バルディの二人も砂をかき分け顔を出してきた


「このアーマー胸鰭がモデルって聞いてたけど、まさか砂をかき分けて勝手に進んでくれるなんてね。まったく、悔しいけどこのアーマーが無かったら死んでたわね」


「祭壇を地面に埋めておいてせ正解でした。初めての試みでしたが試してみる物ですね」


 無事に集合し、勇者王を倒した我々は彼らはひと息つき談笑してた


「ふう、何とかなったなみんな。これでまた畑仕事に戻れる・・・・、かも。俺を受け入れてくれる場所が有ればな…」


「もう、残弾すっからかん、船もオシャカだね。楽しかったけどこれからどうするかね」


「魔族側も人類側も、大分疲弊したでしょうから、もう大きな戦いはしばらく起きないのではないでしょうか? 僕が思うに我が死が人間界に居る限り、魔族に対する抑止力になるでしょうし」


 談笑の中に聞き捨てならない物があった


「おい、それでは私が人類を守っている様ではないか」


 他の者達の反応は・・・


「結果的にはそうなるか?」


「魔王倒せるような勇者は魔王に匹敵する何かって言うし、逆もアリなんじゃないのかい?」


 ・・・どうやらそう言う認識らしい、少しじゃれ過ぎたか


「仮にも魔族の頂点に立った事も有る私が、その様に認識されるなど屈辱だ。・・・・よし、再び魔王軍を組織し直して人類に宣戦布告をするか」


「待てバルト!それはシャレにならん!」


 エルウッドが私の言葉に全力で反対して来た。まったく、魔族が人類を殺して何が悪い


「大丈夫だ、次はちゃんと楽しめる様に加減する」


「まったく信用出来んわ!」


 エルウッドは喚いているが、バルディはむしろ嬉しそうだ


「組織としての我が死の勇士をみれるということですね♪」


「なんでバルディは嬉しそうにしてんだよ!」


 騒ぐエルウッドに割り込んで、フランチェスカが門を指差し発言した


「取りあえずさ、あの勇王が開いた門をどうするか決めない?」


「それもそうか、ついでにどの様な造りになっているか見学していこうではないか」


 そして私たちは門の場所まで行った


「デカいなぁ…。どうするフラン、壊しちまうか?」


「魔族はこれが無くても自由に人間界に行けるんだよね?」


「上位の魔族ならばな。しかし、お前達を魔界に招き入れた様に、術者以外の者も転移させる実力が有る者は少ない。ラギも二つの世界を行き来する転送装置を作るのに失敗しているからな。どのように動いているのやら」


「ふむ…、我が死よ、人類側としての発言ですが今後の為、門は残してもらいたいと僕は考えますが、我が死はどうお考えで?」


 壊すか残すか・・・、どちらが面白いだろうか…。んむ?何かおかしいぞ


「この門…、異様に熱を持っているな」


「そうだな、こんなもんを潜って来たのか奴ら? ぽいっと」


 エルウッドが石を門に投げると、石が溶けてしまった。それを見て他の者が叫ぶ


「これ明らかにおかしいんじゃないかい!?」


「不穏ですね・・・、僕が入ってみて来ましょうか」


 門をよく見るにこれはマズいな


「この門、魔界に通じると同時に、魔界の大気中のエーテルを吸い上げて稼働している様だな。先ほど私と勇王の戦闘で急激にエーテル濃度が上がり過剰供給になっているが…」


「じゃあこのままじゃ!?」


 エルウッドの奇声に耳を塞ぎながらも答えてやる、非常事態だからだ


「このまま放っておけば繋がった両世界が吹っ飛ぶだろうな。 運が良ければ被害は魔界だけで済むだろうが・・・。なるほど、勇王め、これを狙ってワザと魔力をまき散らす戦法を取っていたな」


「冷静に分析してる場合か!」


 相変わらずエルウッドは騒がしい男だ。こうなれば打つ手は一つしかあるまい


「最悪の被害を生む前に破壊する、世界の半分は死の世界になるだろうが全滅するよりはマシであろう」


「よし!何を手伝ったらいい?」


 エルウッドと他の者は意気込んでいるが・・・


「足手まといだ、帰れ。ここは私一人で十分だ」


 ・・・今回は正直じゃまだ


「バルト? うわ!」

「きゃあ!」

「我が死!」


 私は人間界のゲートを開き、彼らをその中に入れた。安全に転送させるには少し時間が掛かるな


「皆の者、これまで余のお供を務めご苦労であった!」


「死ぬ気かバルト!?」


 エルウッドめふざけた事を言いおって


「死にはしない! 見くびるなよ。付き合ってくれた礼だ、余の名において世界の半分を貴様らにくれてやる!生のある世界で好きに生きよ、だが死の世界は余の領分だ、勝手にやるさ」


「ふざけてるのかい!」


 フランチェスカ、もしや泣いてるのか?


「ハハ、貴様らはもう人類最強の勇者なのだ、誰も文句は言うまい!」


「我が死ぃ!」


 こやつバルディは確実に泣いているな。汚い泣き顔だ


「さらばだ、またいずれ会おう!」


「まっ‥…」


 勇者達の戦争を完了した。さて最後の仕上げだ


「最大火力でなくてすまないが、盛大に散るがよいガラクタがぁ!!!」


「ガ・・・・」


 この様な強い爆発は・・・、余もさすがに・・・・体験した事はないな・・・





       ありがとう、楽しかったよ勇者達

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