episode±15[渡り鳥が方向に迷った時に目指す星が本当はどれなのかはわからないけれど]
「……クッソ。きょ、今日は終わりで」
敗北は、重ねてこそ意味がある。
そう思ってあたしはあいつに勝負を仕掛けてきた。
腕をもがれるなんて序の口だ。首を飛ばされてしまった結果強制的に能力が解除されて何が起こったかわからないまま気がついたら負けていた時がある。しかもヤツの膝枕でだ。気分は最悪だ。いざやりあうとなったらドSなくせに、なんであんなに気を使うのか理解できない。きっと二重人格なんだよあいつ。ぜーんぜん理解できない。
あたし、
エピソードは長くなるから省くとして、その時思ったのは明らかに一つの感情だ。
『これほどまでに何かありそうなやつは見たことがない』
やりそう、じゃなく、ありそうってところがミソ。
普段誰ともつるまないくせに、なんであんなに説得力もった雰囲気で肩で風を切って歩いていられるのか。学年主席の余裕なのか。だとしたら薄っぺらいけれど、そこにガチガチのプライドなんて感じない。だから違うと思った。そんなヤツとすれ違ったところで「またなんか調子こいてる」ぐらいにしか感じない。ヤツには、たまに勘付かれないようにヤツのクラスを覗きに行くんだけど、一人で教科書かなんか開いている時もあれば黄昏ている時もあるし、席の周りに集まったクラスメイトと楽しそうに話している時もある。そんな器用に学生生活の時間を乗りこなしている強度を裏打ちしてんのは、多分純粋な"強さ"みたいなものだ。
あたしが、他人なんかどうでもいいっていう風を装ってガチガチに臆病なことを隠して一人でいるのとは訳が違う。
だらかあたしはヤツに憧れることにした。勝手にだ。別に外から他人をどう思おうが、そんなことに許可はいらない。ストーカーとかにならない限り、他人の思いを他人が踏みにじる権利なんてない。もうすでになってるじゃんとかの主張は認めない。
そしてヤツにちょっかい出すのにはもうひとつ理由がある。
気になるより何より、あたしがこのままじゃいけないってことだ。
未来とか将来とか、なりたい自分とか、そんなの想像できないのはきっとダメなことなんだ。他人はどうあれ、あたしはね。
親は能天気で学生は楽しく過ごせ、一旦適当に社会人になったらあとは金持ちの嫁になれ!とか言うけど、そんなマネキンみたいな人生こっちから願い下げだね。何かやれなきゃ、人として終わってんだろ。
って思っていた頃に初めて、あの縫至答 乃の立ち姿を見たんだ。
もう一発で射抜かれたね。まるで恋みたいだった。ああなりたいけど、あたしじゃそれが無理なことぐらい秒でわかる。
なら、少しでもアイツを理解して、あたしなりにアイツを理解してやろうって決めた。それが、あたしがアイツに喧嘩を売る、最大の理由だ。
ところが、どうよ?
仲良くお泊まり会なんかしちゃってさ。
いや死ぬほど楽しかったけどさ。
なんなら今から?
色々差し入れ持って押しかけてやるつもりだけど?
西央ちゃんも呼ぶかなぁ……二人きりだと緊張するしなぁ……
い、いや、今のなし!
緊張とかしねーし!なんなら家の場所一発で記憶したから家の近くで喧嘩売っちゃうもんね!もんね!!
星たちの出会いは仕組まれたものではない。
だがそれゆえに、その全てが運命的なものであるように感じるものもいるかもしれない。
偶然が生む、奇跡の縁が紡ぐ、星の物語。
果たしてそれは、誰を巻き込み、何を巻き起こし、いつかどこに向かうのか。
Continue to Next daily life.
星籠セクステット~6th in the Lunatic~ episode±XX 唯月希 @yuduki_starcage000
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