実直で不器用な義高と、誇り高い気概を持つ意地っ張りの帰蝶。
政略結婚で結ばれた二人は、帰蝶の気難しさのせいか夫婦仲はよろしくない形でスタートする。
ありがちな女の嫉妬にも負けじと、舞や歌をそつなくこなす帰蝶。
だが、先代将軍の落胤の嫁という恵まれた立場の帰蝶へ、意地の悪いトラブルが。
嫁を守ろうとする義高の男らしさが、二人のこの先が良好なものへ変わるのではと期待させる。
さて、二人はどのように変わっていくのだろうか?
この作品は、作者さんの語彙選択や読みやすく工夫された文章と、過不足ない描写のおかげでサクサクと読み進められる。
時にハラハラし、時に感心しながら読める。
しかしもう一点強調したいのは、一話毎に工夫されているタイトルだ。
タイトルを追いかけるだけで、作中世界の雰囲気が伝わってくる。そして興味も惹かれる。
和歌の一節を取り出したかのようなタイトルで、雅さも感じられてお洒落だ。
早速、一話目から読んでいただきたい作品だが、まず、タイトルだけでも追いかけてみてはいかがだろうか?
それだけでもこの作品の面白さが伝わってきますよ。
とにかく私はこの作者さんの描かれるキャラクターが好きで。
今回もとっても楽しみにお邪魔したわけですけれど、、、ほら素敵でしょう!
気の強いヒロイン帰蝶。
「軽率に脱ぐ男」義高。
そして一癖も二癖もありそうな御所の面々。
それに、キャラクターだけではございません。
パッと情景が浮かび上がる、丁寧な描写。特にお衣装が素晴らしい。
この作品のタグを見てみると、
「すれ違い」「意地っ張り」「溺愛」「ハッピーエンド」と並んでいる。
この並びを見ているだけで大興奮ですよね。
本当に続きが楽しみな作品。
一緒に更新を追いかけながら読みませんか??
秋保さんの長編は三本読みましたが、今回は特にヒロインがよかったです。
この作品、随所に読者を飽きさせない工夫が織り込まれていて(主に脱ぐという点んで……)ついそっちに目がいってしまうのですが、しかし私には今回は帰蝶でした。
こういうタイプのもともとあんまり興味がない人同士の結婚から始まる恋愛ものって、明治以降のお見合い系の話ではわりと見るパターンかもですが、これまではあんまり良さがわかりませんでした。この話を読んで初めて、ああこういうところに面白さがあるのか、こういう風に二人が寄り添っていくのか、というのを理解しました。
帰蝶は気も強いし自分の行動を自分から決めていきたいタイプでしょうから、最初はかわいそうだな気の毒だなという気持ちで読んでいたのですが、ただ義高との距離感がすごく丁寧で、ちぐはぐな二人が少しずつ隙間を埋めていく感じがよかったなです。
読了してほっと胸が暖かくなる、素直な秀作だと思います。
読めてよかったです。