第23話 第2部 冬の魔女 完
「どう?そろそろ一年経つけれど、やっていけそう?」
「まだ不安もあるけれど、やっていきます。ってか、叔母さーん、私がやっていけないと言ったらどうするつもりなんですか?」
「昔と違うからねぇ、今はどうしても魔女になるのが嫌だというのなら途中で止めることも出来るのよ。でも文乃ちゃんは素質もあると思うし、何よりあたしは文乃ちゃんと一緒に居たいし続けて欲しいと思うわよ」
ウルっときちゃうじゃないか。
叔母さんは、お母さんとは違うタイプの人だけど(うちのお母さんはオシャレ好きで見栄っ張りな人)この一年、一緒に過ごしてきて、私にはもう一人のお母さんのようだ。
八ヶ月間とはいえ、世の中とは離れた場所で生活する事の不便さを心配していたけれど、一応時代に合った家電や娯楽は魔法でも何とかなっているし、気軽に人に会えない寂しさはあるけれど案外慣れてくるような気がしてる。
それともさっき叔母さんが私には素質があると言っていたけれど、それはそういう事に対する対応力って事でもあるのかもしれない。
「さて今年は夏休みが終わったら、文乃ちゃんに本格的に魔法を教えていくわよ」
「え?もう教えてもらえるんですか?」
「前も言ったでしょう?うちの魔法は血と経験。血はバッチリなんだから後は経験よ。これから私が引退するまでガッツリ仕込んであげるからね」
高校の頃から、特に才能も手に職もない普通の女の子である私が自分の力で生きていけるのかと不安だったけれど、約一年叔母さんと暮らしてみて前よりはその不安が消えたと思う。
それは自分に自信が出来たからというより、叔母さんやオーロラの魔女さんや山田さんたちなどが伝えてくれた励ましや寄り添いがあったから。
冬の魔女は人を助け、守り、送り出してあげる魔女。
もしかしたら、『不安』という気持ちを強く知っているからこそ、人にしてあげられる事もあるのかもしれない。
叔母さんは、今年は青森のイタコをしている魔女さんにも会いに行くと言っていた。
私もその時は家に帰っていても合流したいなと思う。
「文乃ちゃーん、また新規受け入れよ。トラの間を使うから用意しましょう」
叔母さんに呼ばれ、トラの間に向かう。
トラの間という事はまたトラさんに会えるのかな。
ふふっ。ちょっと楽しみに、私は微笑んだ。
日本の魔女物語 ピューレラ @natusiiko2
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