橋の上で佇むヒロイン、通りがかりの彼が見つけた。自ら命を絶ってしまいそうに思えたから……。
必死に働いていた、もうひとりの彼。ヒロインとは兄妹のような境遇を過ごしていた。
物語は、この三人の視点で進んでいく。
それぞれの出逢い、境遇、想いが、複雑に絡まりあう。それが、ヒロインの身の上に起きた過去の事故によって、少しずつ解れていく。
この三人が行きつく未来は……?
時系列までもが複雑に交差しているが、読むことに労力は必要ない。だからこそ、読みやすい。
視点が話ごとに移ろうが、それすらも伏線に繋がっているのだろう。
読み終えると同時に、すべてが理解できると思う。
この流れで、ハッピーエンドに持ち込める作家さまの腕は、実にお見事!
過去と現在、そして未来が干渉し合う。干渉しあって、そして世界は作られて、壊されて、再構築されていく。
タイムスリップものとは少し違う、静かに世界が変わっていく様をよく表した作品でした。
世界は我々が作っているのだ。それがどんな世界だとしても、どれほどに理不尽で、不条理な世界だとしても。それは我々が望んだことであって、地面に落ちた茶碗などではない。
でも、もしやり直せるのなら。未練を残してくれる彼女の声が二次元から聞こえてくる。未練を残して、そしてそれを遂行してしまうのだから、とても憎い、憎くて羨ましい。
僕が憎く、そして羨望しているのだから、この作品はとても冷たくて、無機質で、それでも美しく感じるのかもしれない。