Day b[ag] Day


「君は"今日"に取り残されたな」


目の前で猫が喋っている。


夜中に突然目が覚めたらこれだ。


「明日は土曜日だから寝かせて」


「土曜日は来ない。バグった」


「バグってんのお前だろ」


夢かもしれない。私は無視して目を閉じた。


「五日間を無為に過ごすお前に明日はない」


「明日はないって、死ぬわけ?」


「死なない」


「じゃあいいよ」


やがて猫の声は消え、眠って、また起きた。


「うそ。金曜日だ」


流れるままに高校に行くと、みんないた。


授業の内容も、隣の男子も、夕飯も。


全部同じ繰り返しだった。


曜日を間違えたのかもしれない。


そう思ってベッドに潜るとまた目が覚めた。


「また"今日"に取り残されたな」


「やっぱり、夢じゃなかったの?」


「また明日も金曜日だ。死なない金曜日」


「なんで?」


「五日間を無為に過ごすとバグるんだって」


「じゃあ、何かいつもと違うことをすれば」


「そうかもね」


私は急いで眠りについた。


次の日もやはり金曜日だった。


いつもと違う道で高校に行った。


仲良しの友達と話さなかった。


夕飯で無理しておかわりをした。


周りにとても心配された。


それなのに、その晩も猫は現れた。


「また"今日"に取り残されたな」


「どうして?いつもと違うことをしたのに」


「バグがこじれた。三度のネジれだからな」


「なにそれ」


「明日を作るんだ。力技で」


私の意識が遠のく。


「次はないぞ。明日――未来を作るんだ」


目が覚めた。金曜日だった。


私は意を決して高校に向かった。


いつものルートで、いつもの教室に。


そして彼が入ってくるタイミングを掴んで。


「あの、土曜日映画見に行かない?」

                 <完>

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

えびてんロケット劇場 えびてんロケット @flying-shrimp

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ