願う少女

ある日、少女は不可思議な世界へと招かれた。

その世界では存在する万象が歪み、色彩すらも怪しく、あたかも抽象絵画の中に入り込んでしまったようだった。
辺りを物珍しげに眺めていた少女は、ふと真っ黒なシルエットを――人らしき存在をみとめる。
その人は言葉をはじめとして、姿や表情、生きる気力に至るまで、ありとあらゆるものを失ってしまっていた。そしてその心も荒れ果て、憤りや嘆きといった負の感情で埋め尽くされてしまっている。
そんな中――少女は、うたった。
その人の心が、どうか安寧を取り戻すようにと願って。
やがて彼女の歌により、かろうじて会話できるだけの力を取り戻したその人は名乗った。

〝　　　〟と――。

これは笑顔を忘れた少女と、全てを失っていた〝　　　〟の物語。


※ 11月16日より始ま…続きを読む