時空を超え戻ってきた愛刀

狼型の怪物から助けてくれた女性に助けられ英治は彼女の家であるこの先にある湖がの近くの小屋に一人出してくれた麦茶を飲んで過ごしていた。

助けてくれた彼女は仕事を終えると身体を清める為に湖で水浴びをしてるらしく英治は紳士らしく彼女の帰りを待っていた。



英治は待つ中で小屋の中をキョロキョロと見渡す。小屋には女性が住んでるとは思えない程銃や刀などの武器を飾っており何かを調べたような跡の書物や訳の分からない紋章などのファンタジー世界にありがちな、いわくつきなものが置かれており、なにより英治が特に目についたのは英治が座ってるテーブルの向かい側の位置から見られるところに紅色の旗が飾っており中心には白文字で『誠』と一文字が掛かれているのを発見する。

そしてその上には日本語で大きく『例え生きる場所は違おうとも志は変わらん』と習字で書かれているのを堂々と貼られていた。




それを見た英治は半信半疑だが彼女が新撰組の土方歳三ではないかと思ってしまう。

「・・・・・・・・・本当に彼女が土方歳三なのか・・・・・」

そう口を漏らした時、土方歳三と名乗る女性が水浴びを終えたらしく下着のような軽装で英治の前に立つ。




「呼んだ?」

「ぶっ!!!!」

突然の登場で英治は麦茶を少し噴き出してしまった。それもそのはずその軽装は胸元の谷間やパンツといったものがもろもろ露出していたからであった。英治は下心はないが無意識に彼女の身体に似合わず少し大きめの胸を凝視してしまった。




「(いやいや、彼女があの土方歳三な訳ないだろ。だって史実の新撰組はムサイ野郎ばかりの浪人集だったはずだぜ。それがあんなエロ丸出しな女性が入って見ろ夜這い確実だろ・・・・)」

英治の中で改めて目の前にいる温厚そうなのが史実では攘夷志士を拷問にしたりルールを破った隊士を見つけては手当たり次第に切腹を命じた残虐性のある鬼の副長と同一人物とは思えなかった。




「ねえ、そこまで緊張しないでゆっくりしてよ。別に取って食うわけじゃないんだから・・・・・」

「はぁ・・・・・・・」

そう言いながら土方歳三は英治の前に座り自己紹介をする。





「改めまして、わたしは土方歳三、君の名前は朝田英治でいいよね」

「う、うん」

「どうした?さっきから浮かない顔をして?お腹空いたのかい。だったらそれを早く言えばいいのに?」

「そ、それもそうだけど・・・・・」

「何?もしかしてこの世界の事?」

「・・・・・・・・それもある。だけど一つ言っていいか?アンタは本当にあの新撰組の土方歳三なのか・・・・・・どうしても噂の鬼の副長とは思えない」

そう言うと土方歳三らしい人物は耳をピクっと動かしニッコリと笑った。




「じゃあ君の思う新撰組の土方歳三はどういう人物か教えてくれるかな?」

「・・・・・・・分かった」

英治は学校やテレビで知る新撰組と土方歳三についての事をすべて彼女に話した。彼女はそれを聞きながら静かに小屋にある物を探してパンとスープを作りそれを食べながら行った。









「・・・・・・・・・以上が俺の知る土方歳三と新撰組の終結だ」

「・・・・・・・・・・・・」

話を終えた頃にはすでに日が暮れそうになり夜を迎えていた。話を全て聞いた彼女は最後のスープを一飲みしゴックンと音を立てた。






「驚いた・・・・・・・史実ではそんな風に語られたのね。いやはやほぼわたしの人生をここまで調べてくれるなんて現代の日本は大したもんだねぇ」

「嘘だ!!!!」

「なにが嘘だと思えるの?ここにいるのは正真正銘の土方歳三。それ以上もそれ以下もないわ」

英治は舌打ちをしながら下に俯きテーブルの下では異世界に来てからずっと充電切れのスマホをいじった。




「(くそこれが動けば史実の土方歳三だと分かるのに・・・・・・・・そうだ写真だ)」



「ちょっと待てアンタが土方歳三ではない根拠がある」

「なにかな?」

「アンタは確か函館に入る時新撰組の活躍を後世に伝える為に写真を撮影したよな。その写真の土方歳三は荒〇先生似のイケメンだった。なのに目の前にいるアンタはなんで十代の少女に見えるんだ?」

そうこれが動かぬ証拠だ。史実の土方歳三は函館戦争時はすでに30を超えていた。なのに目の前にいるのは十代後半の少し大人びた少女にしか見えないのだ。これが覆ることのない証拠なのだが土方歳三はこれに対し微塵も動揺しなかった。




「荒〇先生ってのは置いとくとして、恐らく君が言ったのは函館の写真館で移ってるのがわたしじゃないって説明でいいよね」

「ああ・・・・」

「キミの言う通りあの写真に映ってるのはわたしではない。アレは仲間の島田魁よ。信じては貰えないけど、わたしは写真という人の顔を映す物は昔からだめでねこれだけは近藤さんの命でも断ってるよ。

まず当時の上司の大鳥圭介さんの命で写真を撮るように言われたけど、どうしても断ることが出来なくてね。しかたなく残った隊士で顔が整った島田に無理矢理カツラを被せてそれぽくしたのが君のいう写真だ。なんならその写真はあるなら見せて欲しいくらいだ」

「ぐぐぐぐ・・・・・」




「じゃあ君のいうこの幼い姿について説明した方がいいか。わたしは確かに君の言う通り北の地蝦夷で散ったわ。だけど今から一年前、ここより少し離れた場所で目を覚まして体を見ると身体が縮んだんだ。年はそうーーん・・・・・恐らく二十・・・・らいかな?この時近藤さんの試衛館にお世話になった頃の年だと思った方がいい」

史実の土方歳三は幼少期は気性が荒く近隣のチンピラに喧嘩を売ってはボコボコにしているバラガキと呼ばれており、栄治もその逸話についてご存知なのでこの能天気な雰囲気からは想像が出来なかった。





「それにしてもここはどこなんだ?」

「ここ?確か、グランブ王国の南部のサンダラ山の奥部のイシュタル湖だ。ちなみにここより三十分くらい下山したら小さな村に着くはずだ」

「そうか・・・」

「で、そういう貴方は、なんであの近くにお香もなしでうろうろしてた?」

「はっ!!!(なんで俺はここにいるのか思い出してきたぞ。考えてみればほとんどがあの爺が原因じゃないか。あの野郎クソしに行くって言った癖に逃げやがって・・・・・なんかむかっ腹が立ってきたぞ。そういえばあの爺がトシさんにこの太刀を渡してくれって言ってたな。これを渡したらあの爺の行方が分かるかも・・・・)

そう思いながら栄治は土方歳三と名乗る少女に太刀を見せる。



「そ・・・・そうだ。実は俺この世界に来た時妙な爺さんにあってよ。アンタにこの刀を渡してくれと頼まれたんだ」

「わたしに?」

そう言いながら俺は彼女に包みを巻いた刀を渡し包みを外し、鞘から刀身を抜く。その時土方歳三は違和感を覚えた顔つきをしていた。




「こ・・・・・これは兼定・・・・なんで君が」

「兼定・・・・なんだ・・・・・どこかで聞いた名前だぞ・・・)

その聞き覚えがある銘に栄治は反応する。






「和泉守兼定・・・・わたしの愛刀だ」

「え・・・・これが・・・?」

和泉守兼定・・・・それは、新選組を預かる会津藩主、松平容保から譲り受けたとされる名刀・・・・

あの土方歳三が愛用したのがそれだ。

その刀身は、歴戦での戦いを経たのにも関わらず傷がなく恐らく打ち直したと思うが如く刃紋は輝きを帯びていた。

兼定はあの有名と言われる池田屋事件を初め、志士との決戦の際はこれを所持しているが、それは戊辰戦争以降の話でその戦争の際は別の名刀を使っており、なぜそれを使わなかったのかは不明である。



「なぜ君がこれを・・・・・」

「それは一緒にいた爺さんに頼まれて」

「・・・・・・」(バッ)

「おい」

歳三は上着を羽織り、外に飛び出した。外は夕焼けを見せ、日が沈もうとする。だが歳三はそれに関わらず周囲をキョロキョロと見回った・・・・・








「(一体誰が・・・・・これを・・・・・渡したのは源さんだが・・・・もしかしてあの人もこの世界にいや、確か彼は爺さんと言った。隊士に年老いた者はいないはず・・・・・)」

「おい!!!!待てよはぁ・・・・・・はぁ」

歳三が周囲をくまなく探してる間、栄治はスーツを脱ぎ爺さんから貰った太刀を片手にシャツ一枚で全速力で走りやっと歳三に近づいた。





「君、ここ一体は結界の外だ。そこにいるとまた魔物に襲われるぞ」

「関係あるか。急に出て行って・・・・なにを考えたか知らないけど残された俺の事も考えろよ」

「あ・・・・・ああ。一度帰ろうか・・・・」

その言葉で頭を冷やしたか。歳三は栄治を連れて再び小屋に戻った。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る