その者土方歳三

「なんじゃ・・・・・お前さん男ならもっと力入れんかい。このままじゃ落ちるぞい」

「じいさん。おんぶしてもらったのになんだよその言い方はよ・・・・」

「お前さん、先程前親切な言葉だったのに随分汚くなったなぁ。年寄りはいたわるもんじゃぞ?」

「アンタみたいな我儘なご老人に敬語はもったいないぜ」

英治はなんとか謎の爺さんを起こし、その後は爺さんの頼みでおんぶして目的地まで同行しなければいけなかった。

そのご老人によるとこの一本道をまっすぐ行くと綺麗な湖があるらしくそこに住んでいる物に荷物を届けなければならないと言うのだ。



出なければなにも離さないと頑固一徹(がんこいってつ)に貫いていたので渋々いう事にした。



この異世界英治はなにも情報を得ずに来ている。普通ならなにも情報や武器などを所持してない者がこの未開の地で生き抜くことは自殺行為だ。それなら少しでも生き残る為にこの環境になれる為の知識を得なければならない。

それが例えくたばりかけの爺さんでも英治は情報が欲しかったのだ。




「で、その届け手の人って何か関係があるのか?」

「それは付いてからのおたのしみじゃ・・・・・」

「ケチくせぇな・・・・・」

「まぁそんなグチグチ言わさんな。目的地まで着いたらそいつに頼んで飯と一泊を保証するぞ。お前さんまだ何も食べてないだろぅ?」

「そ・・・・・・・・それは・・・・・・・・」ぐう~~~~~~

英治の腹の虫はそれに反応し大きくなった。この世界に来てまだなにも食べてなかったっというより老人に食料を食べられたので現状では空腹感で溢れていた。



英治と爺さんはこの調子でグダグダと話してしばらくしてようやく老人は反応する。





「喜こべ坊主。もうすぐ目的地に到着だぞ」

「はあ・・・・・・・ようやくか・・・・」

ようやくの目的地で安心したように息を吐いた。これでくつろげると英治は思ったのだが・・・・・・




「その前にちょっと待てお前さん。ここで降ろしてくれ」

「なんだよ爺さん」

老人はバタバタと足を動かし止めるように言ってたので英治は軽く舌打ちしてご老人を降ろした。

そして老人は栄治に二つの刀を渡す。一つは、使い古されたオンボロで茶色く変色した太刀でもう一つは高級な布で覆われた刀だった。



「儂今から用を足してそこらの茂みに行くからこれ預かってくれ」

「ちょっと待てぃ。もうすぐ目的地なんだろ?そこまで我慢すればいいだろ?」

「嫌じゃ・・・・儂それまで我慢したのぞい。正直先がでかけだぞ・・・・・・お前さんの背中にしてもいいのなら別にいのじゃが・・・・・・・」

「あ~~~~~~分かった分かった。なら行け」

「まあ最後まで聞け。いいか、もし儂が用を足してる間、トシさんって若者に出おうたらこの包みにある太刀をを渡すのじゃぞ。間違っても儂の小汚い獲物を渡すではないぞ」

「いやアンタ用を足すのはあまり時間はかからないんだろ?」

「分からんぞ。下手したら日が落ちるまで出るかも知らんぞ」

「長いよ」




英治は軽く突っ込むと老人はニヤケながら茂みに入る。茂みに入った途端にホッとしたかため息したのだが急にご老人が声を出す。




「あ、そうそう言い忘れたことがあったわ」

「わ!!!!ビックリした」

「言い忘れがこの湖周辺には魔物がいるから気をつけろよ」

「魔物?そんなの今まで見かけなかったが・・・・・・」

「それは当然じゃ。儂のポケットにある魔除けのお香を持ってるから寄り付かんかったわ。それ持ったら半径2メートル以内は魔物は寄り付かんぞ」

それを聞いた途端に英治は妙に顔を青ざめて周りを見る。そして不気味森がいつも以上にざわついたから余計に不安になる。




「なら俺危ないじゃないか」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「おい爺さんどうした?」

「・・・・・・・・・・・」

英治が声を掛けようとするが老人がいる茂みにはなんの反応はない。心配なので英治は慎重に爺さんがいる茂みに向かった。




「爺さん。さっきから返事が無いけど気張ってるの・・・・・・・」

声を掛けようとしたがそこに老人の姿はなく代わりに目にしたのは、木の枝に白紙のようなものが引っかかっていた。嫌な予感がしたか英治は恐る恐るその白紙を開けると・・・・・


『後は頼むぞい(笑)』




と一言バリバリの日本語を書き残していて、それを見た英治は今まで貯めに貯めた怒りを爆発し紙を破り捨てた。




「あの爺~~~~~~どっか行きやがったな~~~~~~」

そう言いながらバラバラに破り捨てた紙をこれでもかと踏みつける。そんなことをしてもなにも変わらないのだが英治はこうでもしないと怒りが収まらなかった。





ガサッ

その茂みの音を聞いて英治はビクッと反応する。

「なんだよ爺さん。まだどこか行ってないじゃないか・・・・・・・もう怒らないから顔を見せてくれ」


英治が茂みの物音の正体がご老人であって欲しいと願ったのだがそれは叶わぬ願いだった。

その正体はご老人ではなくよだれをたらし獲物を狙う狼に似た魔物が数体現れて英治を囲んでいた。





「グルルルルルルル!!!!」

「うっな、なんだよこいつらは、魔物なのか?」

予想がいな者の出現で英治は腰を抜かし木に向かってもたれてしまった。それに対し魔物達をじりじりと英治を追い詰める為に威嚇しながら歩み寄せた。



「く・・・・・・・どうしたら・・・・・・・そうだ爺さんの太刀を使えば・・・・・」

追い詰められた英治はふとご老人から預かった太刀を持ってるのを思い出しそれを抜こうとするがあまりにも緊張しすぎて抜けなかった。




「く・・・・・・・・そ手が震えて抜けねえ・・・・・・なんだよこんな時に・・・・・」

危機的状態の中で英治は全身汗だくで鞘から太刀を抜くという作業も出来ぬまま恐怖で頭が回らなかった。



そして魔物は混乱している英治を関わらずに一体飛び掛かった。この時英治は死を恐れていた。

生前糞見たいな人生をやっと脱却してこの異世界で第二の人生を歩んだのに初めて出会った異世界人の老人に見放され終いには魔物に襲い掛かる始末・・・・・この時英治は初めて生きたいと強く願っていた。




ズドン!!!!

英治が死を直面し目を塞いだ時一つの銃声が聞こえた。英治はゆっくりと目を開けると狼の魔物の頭部には赤い血が噴き出し絶死している姿であった。突然の状況で英治を含め残った魔物もざわついていた。



そしてそれらの前に森の奥から黒い洋装で浅葱色のマントを羽織った赤紫色の髪をした小柄だがやや大人びた雰囲気を持つの長髪の少女の姿であった。

女性は片手にライフルを所持し先程魔物に向かって放ったとされるように銃口から糸のような白煙が噴き出し腰には大小の刀をつけており涼しい顔でゆっくりと歩み寄せた。




「ねえ、君伏せて頂戴」

「え・・・・・・うん」

突然の少女の指示で英治は状況が分からぬまま地面に伏せた。

それを確認した女性はニッコリとほほ笑み袖から弾丸を取り出しそれを強く握る。その時弾丸は紅色に包まれそれをライフルに込めた。



「グルルルルルルル!!!!」

そして残りの魔物は先程死んだ仲間の仇としてターゲットを女性に移り変わり攻撃を仕掛けようとする。

だが女性はそれに全く動じず銃口を向けるその時ライフルからは赤い蒸気はたまた妖気のようなものに覆われた。


魔物が女性に向かいはや数十メートル頃合いを見たか女性は笑い引き金を押す。



「くたばれ・・・・・・」

それが魔物に向かっていった遺言なのか。そう言い残した直後銃口から弾丸ではなく無数の矢のようなものが拡散し魔物を次々とハチの巣としていた。

嵐のような無数の矢で魔物は原型をとどめぬようにバラバラに砕け散った。



「グギャアアアアアア!!!!!」

魔物は悲鳴に似つかぬ声で叫び絶命し周りに魔物の肉片が飛び散り、英治を除く周辺は無数の矢に木々などは無数の矢によってズタズタであった。


それを見た英治は声も出せぬまま口をポカーンと空いてしばらく動かなかった。




「あちゃーーーーーー。やりすぎたか。これを使うの初めてだから調整が難しいな・・・・・」

対する女性は、おどけながら髪を掻きむしり魔物の血でできたカーペットを踏みしめながらゆっくりと英治に向かう。





「ねえ君大丈夫・・・・・・・立てるか?」

「・・・・・・・・・・ああああ」

「ありゃ。すっかり放心状態か・・・・・見たところ変なカッコしてるけどあたしと同じここの人間じゃないようね・・・・・・」

女性のその不可思議な発言で英治はやっと我を取り戻した・・・・・・

そして英治は自分より恐らく年下の女性に声を掛ける。




「ここの人間じゃないって君は一体?」

「あたし?あたしはトシ・・・・・・・・・元新撰組副長土方歳三・・・・・って分かるわけないかそれ・・・・・・・」



そう言い放った瞬間これから起こる嵐を予想するかのように急に風が強く吹き荒れ女性の背後に『誠』と書かれていた浅葱色のマントが揺らいだ。







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