とりあえず異世界へ
「ここは・・・・・・・どこだ」
男は目を覚めると見知らぬ草原が映っておりなぜか後ろの大樹にもたれていた。
男の名は朝田英治25歳独身とあるブラック企業勤務の営業マン。
趣味も特技もなにもない無個性な男だ。
勤務時間は朝早くから夜遅くまでが当たり前で休日出勤もよくある。
オフィスは女っ気がない野郎の巣窟で、一昔前の仕事机を使い成果を得られるよう外回りに励んでいた。
その人生は悲惨で毎日上司に嫌味を言われ、後輩にも忌み嫌われる仕事場であった。
そのストレスの影響か体重が極度に減り昼も夜もボケーーとする時間が多くなっていた。
それが仇になったか徘徊老人の如く無意識に歩くことが目立っており、周りを見ずに横断歩道を渡ってたさいにトラックにはねられてそこで彼の人生は終わった。
なんでここに来たのか振り返りながら青い空を眺めていた。そう思いながら着こなしてるスーツのネクタイを緩めた。
「これは夢なのか?・・・・・・・・イテテやっぱり本物だ」
頬を引っ張るが無論痛みを感じ確信するこれは夢じゃないんだと・・・・・・
「これはいわゆる噂の異世界転生って奴なのか・・・・・・・じゃあこの後可愛い美少女が声を掛けてくるイベントがあるのか?」
そう英治は期待するが四方八方見渡しても緑の大地で人どころか村も見えなかった。
「とりあえず歩くか・・・・・・」
いろいろ悩みながらも英治は、持っていたカバンを持ち動き出し茶色い土の大地を見つけたのでそこに向かって歩く。
この道はよくよく見ると馬車が通った後が見えたのでこのままいくと街にたどり着くと確信したのだ。
英治は青空を見上げ陽が落ちるまでまだまだ時間があると察すると全は急げとして歩み出した。
「本当にこのまま歩くとなにかあんのか・・・・・」
グチグチ独り言を言いながら歩み寄るとようやく人らしい人を見かけた。それは岩の上にただただ佇んでいる無精ひげを生やした坊主頭のご老人だった。
歩き出した恐らく十分以上。疲労よりも孤独のせいで精神的にまいった英治にとっては嬉しく感じていた。
そう思いながらゆっくりとその老人に近づいた。
「人だ。お~~~~~~~~~い」
「・・・・・・・・・なんじゃ?」
英治は緩めたネクタイを再び締めここが現代ではないと言うのに社会人らしく敬語を使った。
「あの少しいいでしょうか?」
「んん~~~~~~~お前さんは誰じゃ?」
老人は杖を握り、ここが異世界だと示すように腰には刀のようなものをつけて欠伸をしながら眠たそうに英治を見る。おねむ前提な感じだった。
「あのここはどこですか?」
「知らん」
「この近くに街はありますか」
「お腹空いた・・・・・・・・・」
「あのお爺さん?」
「パンよこせ」
「なんでここにいるのですか」
「あんだって?」
「(言葉のキャッチボールしろよ。爺~~~~~)」
英治は苛立ちを内面にしまいながらも社会人らしく振る舞う。
「おじいさん聞いてる?」
「なんかくれたら教えてやる」
「なんかって?なにをですか?」
「いいからパンを寄こせ。石を投げるぞバカたれが」
おじいさんは嫌味そうな顔で石を握り投げようとしたので、英治はお手上げな状態だったのでカバンから死ぬ前にコンビニで買ってたアンパンと水を渡す。勿論これで英治の食料はゼロだ。
「はいパンですよ」
「おおありがてぇ」むしゃむしゃ
英治はパンの包みを取り渡した瞬間おじいさんはすぐさまにパンを奪い取りムシャムシャとほうばった。
それを見た英治は急に空腹感が増してしまった。
「なんじゃお前さん儂のものだからあげんぞい」
「はいはい要りませんよ」
英治にとってはこの世界のことが知りたいから沈黙に徹していた。でなければ老人とはいえ一発蹴りをいれてたであろう。
英治はただただ満腹になっている老人を心待ちしていた。
「ふう~~~~~~食った食った」
「お粗末様ですでは情報を・・・・・・・」
「さて寝るか~~~~~~」
「寝るな~~~~~~~~~~~」
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