異世界壬生浪

夕凪

プロローグ 最後の狼

それは一瞬であった。

先程馬上で戦場を前線で駆け巡り敵を屠りながらただただ敵の本陣を目指していた武士(もののふ)が木霊する銃音によって地面に二三転しながら馬から転げ落ちる。



その者は何が起きたか分からずに涼しく感じる風を感じながら曇天の空を見上げる。


口周りは先程転がったせいで全身が泥まみれで顔に付着した泥を噛みしめながら弱まった体ながら強く握る。



その者の腹部は数弾に及ぶ弾丸を浴びた影響か浅黒い血で覆われ吐血する。



ただ意識は朦朧としながら静かに音を聞きながら周りを見る。


ホンの一瞬の光景だが自分の周りには自分の仲間と敵の死体がそこら中に転がっており、仲間はその者の死を予測すると怯えるように撤退していた。



敵は勿論勝利を確信したように勝鬨を上げ勝利に酔う。



だがそれでもその者は残り気力を集中し自分の獲物である刀をまさぐりながら探す。



その者は負けを認めなかった。自分には戦場が全て勝たなくてはいけない存在だ。負けて帰る場所はどこにもない。

そう自分の人生を走馬灯のように振り返りながら剣を握る。




「まだ・・・・・・・・・・終わらない。新・・・・・・せんぐ・・・・・・みは不滅だ・・・・・・」

短い呼吸ながらも口元に血が噴き出しながらも誰にも聞き取れないよう呟いた後にその者は逝った。




その者の名は土方歳三。旧幕府軍率いる蝦夷共和国の幹部であり蝦夷共和国を平定してから今日まで無敗を誇った司令塔であり元新撰組『鬼の副長』と言われた者だ。

幕府を潰す為に薩長が率いる新政府軍との戦いによって仲間が脱退や死亡の果てに新撰組はついに一人になってしまった。



その武士の意志はこの身が砕けようと剣は離さない。場所や時代が変わろうと再び誠の旗を揚げる。


それが新撰組・・・・・・・決して散らぬ無敵な武士・・・・・・・・・・


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