エピローグ、或はとある図書館の司書と利用客の会話
「すみません」
「はい、どうしましたか?」
「あの、何か地下一階の棚に、違う本が間違って入っていたみたいなんで、持ってきました」
「ああ、ありがとうございます。どの棚に入っていましたか」
「天文学のところです。
ただこれ、表紙に何も書いていないんですよね。ラベルも、見開きに貸出カードもタグもないし」
「それは―――― 当館の蔵書ではなく、どなたかの忘れ物ということでは?」
「いやぁ、それは無いかなと思います。
随分と薄いけれども立派な装丁だし、さっきパラパラと見たら、誰かの日記風に書かれた小説のようだったので」
「作者の名前は……見開きにも書いていませんね。どういう内容でしたか?」
「うーん、初めの方しか読んでいませんけど、図書館に閉じ込められた人の話みたいです」
「図書館に閉じ込められる、ですか」
「はい。
内装とか本棚の位置が、この図書館と同じようだったから、もしかしたら図書館の記念か何かで書かれたものなのかなとか思ったんですが…お聞きしていると、どうやら違うみたいですね」
「どうでしょう……確かにそんな話は聞いたことが無いですね。
ただ、私もここに勤め始めてから日が浅いので、もしかしたら職員の誰かが知っているかもしれません。聞いてみるので、お預かりしてもいいですか?」
「お願いします。それじゃあ、僕は帰りますね」
「はい。本日もご利用、ありがとうございました」
図書館暮らし。 善吉_B @zenkichi_b
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