ファラオの楽しいお墓建設

ちびまるフォイ

そうだ、ピラミッド、行こう。

「さて、アヌビスに頼んだ僕のお墓できているかなぁ~~」


ファラオは鼻歌交じりに砂漠をスキップ。


「あ、ファラオ。お待ちしてましたよ。

 ちょうど出来上がったって報告にいくところでした」


「おお、アヌビスくん。よかったよ、さっそく見せてくれるかい、僕のお墓」


「墓?」


「ほら、君に頼んでいたじゃないか。

 僕が死んだ後に作るお墓だよ。できたんじゃないの?」


「できたのは昼食です」

「墓は?」

「いるの?」


「入りまくるよ! なんでエジプトの王が墓なしにならなきゃいけないんだよ。

 墓がなかったら僕の死後に顔に落書きされまくるよ!

 額に肉とか書かれちゃうよ! 君わかってる!?」


「あーもううるさいなぁ。大丈夫ですって、ちゃんと作ってますから」


「本当だろうな。嘘だったら許さないからな。

 お前の末代までファラオの呪いかけるからな」


アヌビスに案内されるままに行くと、大きなピラミッドが出来上がっていた。


「どうですか、ファラオ。ご覧の通りです」


「こ、これは……!」


「我々も頑張りましたよ。壁画に好きなだけファラオの悪口書いていいって言ったら

 奴隷たちもしゃかりきに頑張りましたから」


「なんじゃこりゃーー!!」


ファラオは怒りのあまりかけていた金のネックレスを引きちぎった。


「え? 気に入りませんでした?」


「いや、僕の注文とぜんぜん違うじゃないか!

 僕はもっと質素で、静かで、厳かな感じって言ったよね!? 言ったよね!?」


「ええ、言ってました」

「なのになんでこんな大きく作るんだよ!」


「大きいほうが目立つじゃないですか」

「墓荒らしのいい標的になるだろ、このーー!」


「痛い痛い。ツタンカー面で叩かないでください」


「こちとら死後の人生かかっとるんじゃーー!」


「落ち着いたくださいよ、ファラオ。

 中を見ればきっと満足しますから」


「……本当に?」


「ええ、中はちゃんとファラオの要望通りに作ってます」


ファラオとアヌビスはピラミッドの中に入った。

ぐるりと回った後に、ファラオはぐったりと疲れていた。


「ファラオ、いかがでしたか?」


「なんだよあの迷路みたいな構造は! めっちゃ迷ったよ!

 作ったアヌビスくんですら迷ったじゃないか!!」


「まぁ、ピラミッドづくりに携わった匠の遊び心で

 ちょいちょい中の迷路とかが変わってるんで」


「いらないよ! 僕のお墓参りする親族が内部で死んじゃうよ!」


「でもファラオ、警備だけは厳重にって話だったじゃないですか。

 そのためにスフィンクスもおいたんですよ」


「スフィンクス?」

「こっちです」


アヌビスはピラミッドの入り口に案内すると、

バカでかい生き物の銅像が寝ていた。


「どうですか、ファラオ。これはスフィンクス。

 ピラミッドに入ろうとする不届き者はたちまち食べられちゃいます」


「いや目立つよ! ただでさえピラミッドで目立つのに

 こんなの置いたら"ここにファラオいます"ってバレるじゃん!」


「バレたとしても、このスフィンクスが守りますよ。

 質問をして間違ったら食べちゃうんです」


「質問?」

「試してみますか」


アヌビスはスフィンクスの足元のスイッチを押した。


『最初は四本足。次に2本足。最後には3本足になる生き物とは?』



「おお、この質問で間違ったら人間を食うのか」


『正解だ通っていい』


「えっ」


「あ、答え人間なんですよ。それで反応しちゃったのかな?」


「いやそんな感度の良い自動ドアみたいなこと言われても……。

 これじゃ全然守れてないじゃん!

 というか、そもそも質問すらする意味なくない!?」


「ファラオ、ゲームとか過ぎでしょう?

 こないだも、側室と野球拳やってたじゃないですか」


「お墓にゲーム性はいらないよ!!」


「もう、じゃあどうしろっていうんですか。

 こっちだって忙しいんだよ」


「それじゃもう一度作り直してよ。

 言っておくけど、僕、こんなお墓に入るの嫌だからね」


「どんな墓なら納得するんですか?」


「僕の死体が荒らされないようなお墓にしてね。

 後できるだけ目立たないように質素にしてほしい。わかったかい?」


「わかりましたよ、まったくもう……」

「僕王だよね……?」


ぶつくさ文句を言うアヌビスをなだめ、新しく墓が作られた。

その知らせを聞いたファラオはドキドキしながらやってきた。


「アヌビスくん。どうだい? お墓のほうは?」


「見てください。できましたよ」

「おお! これは!!」


出された墓はまさにファラオの要求どおりで質素な見た目になっていた。

デザインも人の形をもして作られているので、威厳も損なわれていない。


「アヌビスくん、すごいよ! やればできるじゃないか!!」


「でしょう。気に入っていただけましたか?」


「もちろん! こういうのを求めてたんだ!」

「それだけじゃないですよ」


アヌビスはふふふと得意げな顔になる。


「ファラオはとにかく墓を開けられるのが嫌でしたから、

 この棺桶には特殊な細工をしてあります」


「特殊な……細工……!?」


「箱を開けようとした人には呪いが降りかかるんです。

 一度、中に入ってフタが閉じられれば、もう完全ロック。

 外からも中からも開けることはできなくなります。無理にこじ開ければ……」


「こじ開ければ……!?」


「末代まで呪われる恐ろしい呪いがふりかかります」


「最高だよアヌビスくん!!」


ファラオは大喜びした。


「この情報を街をはじめ、すべての人に噂するんです。

 そうすれば、この棺桶をこじ開けてファラオにいたずらしようって人はいなくなる。

 ファラオも安心した死後を楽しめるってわけですよ」


「いやぁ、アヌビスくん。僕は君を推薦して本当によかった。

 デザインも最高だし、防犯システムも万全じゃないか」


「ありがとうございます、ファラオ」


「僕は特に、この赤い目が気に入ったよ。どうして赤色なの?」


ファラオは棺桶の顔を指さした。





「ああ、それは……使用中だと赤くなるんです。

 さっきトラップ動作確認で人が中に入ったので」

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