「あの楽園は今、私達ヒトの心の中で強く輝いて残っている、か......」
パークの外に出る術も見つからず、行くあてもなく砂浜を歩いていたら、朽ちかけの小さい船を見つけた。中には壊れた機械やら開封済みの缶詰やらが転がっていて、何か面白い物はないかとがらくたを漁っていたら出てきたのが、この紙の束だ。確か、シンブンシとか言うんだったか。
色褪せてかなり読みづらくなっている文字を追ってみたが、誰だか分からないヒトの名前やら組織の名前が多すぎて、よくわからなかった。ただ、その中に「ジャパリパーク」の文字列を見つけたので、そこだけでも読むことにした。
読み終わった頃には、すでに太陽は西に傾いていた。
「ラッキーさん、この2XXX年っていつのことか分かります?」
「マカセテ。日本標準時ノ時刻情報ヲ取得......シュト......、......、エラー発生、エラー発生、アワワワワワワワ」
ラッキーさんが調子狂うだけ予想外の時間が経っている、ということだろう。
どこの誰がいつ書いたものかは分からないけれど、「楽園」はヒトの心に関係なく今ここにあるし、なんならヒトの方が残っていないような気もするし、今となっては的外れな文章だ。
ただ、かつて、遙か遠い昔に、ヒトがジャパリパークにいて、今とは違った形でフレンズ達と楽しく過ごしていたこと。このことを記した資料が新しく見つかっただけ大収穫か。
シンブンシの束だけかばんにしまって、僕はまた砂浜をあてもなく歩き出した。
特集記事「あの楽園は今」 丁_スエキチ @Daikichi3141
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