2020年 8月15日

 晴天だった。

 強烈な日差しと蝉時雨が降り注ぎ、それを跳ね返すようにアスファルトの道路は熱と陽炎を揺らめかせる。いつも通りの炎天下だ。


 わたしとキリノは、学校正門脇の木陰に座っていた。


「本当に、行くの」


 隣に座るキリノに訊く。


「ああ。それが私たちの存在意義だから」

「……そっか」

「…………」


 彼女は立ち上がった。日向へと踏み込む彼女の影は、地面に映らない。


「じゃあね、ミライ」

「うん、じゃあ」


 短く言葉を交わすと、彼女は歩き出した。

 その背中を、わたしは寂しさと清々しさの入り混じった気持ちで見つめる。


 彼女といた1週間は、たぶん少しだけわたしを変えた。別人のようになれたわけではないだろうけど、きっと何かが変わったはずだ。


 わたしは、もう大丈夫だろう。


 びゅうっと、夏疾風なつはやてが吹いて、わたしはかぶっていた麦わら帽子を押さえる。


 風と陽炎に溶け、消えてしまったのだろうか。

 気が付くと、霧のようだった少女は、もうそこにはいなかった。

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ミスティ・サマー 朝霞 はるばる @ff5213

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