最終話 愛をつむぐ
それから、さらに数ヶ月経ったある日の昼下がり。
「ねぇ、杏奈の初恋の人ってってどんな人だった?」
ふと思い立ったようにユウが言った。私はクスリと笑う。
「ユウったら、なに言ってるの?」
「いや、なんとなく」
あれ、なんかユウの顔赤い。まさか初恋の人に嫉妬してるとか? なにそれ、可愛すぎ。
「ふふ、……初恋の人がだれだろうと私はユウが大好きだよ」
ユウのそばへ行くとキスをした。彼はホッとしたように微笑む。
「ーーありがとう」
「私も……ありがとう」
初恋の人……か。そう言えば、私にも一応、初恋の人いたな。
と言っても、その男の子とはたったの一度しか会ってない。あれは、たしか。そう……小学校五年生のときだ。
引っ越してきたばかりで、クラスの子とも馴染めなかった。落ち込んでトボトボ歩いていると、声をかけられた。
「あの」
「はい?」
「ハンカチ、落としたよ」
「え?」
男の子が差し出すものを見た。見慣れた赤いハンカチ。ハッとして男の子から受け取った。
「あっ、私落としちゃったんだ」
恥ずかしくなってそこから逃げ出すようにかけた。学校でその男の子の姿を探した。けれど、違う学校だったらしく見当たらなかった。
あとから、後悔したんだよね。名前訊いておくんだったって。あの子の名前。知りたかったな……。もう過去の話だけどさ。あぁ、そうだ。今日はユウに報告があるんだった。
「ねぇ、ユウ」
「なぁに?」
お腹の中に、赤ちゃんがいるってこと。ユウ、知ったら驚くかな。
「あのねーー」
ユウ、あなたと出会えてよかった。
あの日監禁されてよかった。
今でも、そう思うの。
可愛い可愛い私のユウ。
あなたは私の檻の中。
〖完〗
監禁 無自由 @nasi_0817
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