不幸に苛まれた結末に、せめてもの幸あれ――そう願う

霧の人形、ノルンは願う。

たった一つの世界を願う。

巨大な全知全能に阻まれて、世界は終焉の途を辿る。

たった一つの見出された希望。

欠損を破る、一抹の可能性。

絶望に凍える世界に、灼熱の怨嗟に満ちた世界に。

その救いを見出さん。

七つの大罪と七つの元徳。

あり方は違えど表裏一体。

生まれし魂は両天秤に汚されて、体という器で不自由に蠢く。

魂の帰る場所に救済は待ち受けず、ただ利用される。そんな世界。

けれどそんな救いのない大事など、実はどうでもよいのだ。

たった一つの願いは不変。

一貫した思いは、構造によって無惨にも貫かれるのだろう。

明日世界が滅びようとも、叶えたいのは一つだけ。

そんなワガママすらも、満たしてはくれないのでしょうか?

終末は近い。

再誕の先にある、泡沫の未来を、信じてみたい。

不幸の先に、幸あらんことを。

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