第2話

「もう終わった?」

「あぁ、終わったよ。又、LEVELは上がら無かったけどね」

 和人のLEVEL。それは、現存中の中では最強と言えるだろう。

 LEVEL300。

 このLEVELは現状最大値とされているLEVELだ。過去約2000年の歴史の中でLEVEL300になった人物は和人合わせて二人居り、もう一人はLEVEL300のまま、忽然と消えた。約600年前の話だ。

 普通の冒険者はLEVEL60〜90前後。

 一流と呼ばれる冒険者は国から称号をもらう事が出来る。

LEVEL100〜150 『赤鬼せっき

LEVEL151〜200 『黒鬼こっき

LEVEL201〜250 『赫龍せきりゅう

LEVEL251〜299 『黑龍こくりゅう

LEVEL300〜   『神』

 称号は強制ではない為、わざと自分のLEVELを隠す人物もいる。

 現状、称号を獲得している人は『赤鬼』15人、『黒鬼』4人、『赫龍』2人、『黑龍』0人、『神』0人。

 和人はまだ、響子以外の人物に自分のLEVELを報告しておらず、称号も貰っていない為、世間には広まっていない。理由は、

「(特に言う事でもないな......)」

 と言う理由だそうだ。

 では何故、和人は最大であるLEVEL300を十代と言う若さで手に入れる事が出来たのか。それには、信じ難い理由がある。

 LEVEL300った理由は二年前の夏の夜。




 この時の和人のLEVELは20と、平均と比べて劣るそのLEVELはこれからどうしようが300など夢のまた夢と言われる様なLEVELだ。

 時刻は午前2時。和人はベットの上で熟睡していた。

 すると突然、脳内に直接声を掛けられた様な気がした。

 その声は女性らしき声だったが、その時の記憶は和人には無い。

『起きろ! 起きろ! 目を覚ませ!』

 耳を塞いでも聞こえてくるその声は、止る事無く聞こえてくる。

「なんだよ!?」

 和人が反応すると、狼狽ろうばいしたかの如く話し掛けてくる。

『もうすぐ地球は破壊される! 今すぐ汝の部屋に開かずの扉があるだろう、急いでそこへ行け! 扉は開けてある』

 余りにも有り得ない状況に喫驚きっきょうしてると思いきや、寝惚けていたのか、普通に思考する和人。

「(確かに、俺ん家には所謂『開かずの扉』ってのがあるが、鍵穴も無ければ、ハンマーで叩いても割れない、一回焔系魔法を撃ったがビクともしない様な扉だぞ、地球が破壊されるってのも胡散臭いし、眠いし、面倒いし、行かなくて良いや......)」

『いや行けよ! 今すぐ行け! 行け行け行け!!』

 脳に直接来る声は塞ぐ事が出来無い為、渋々、和人は階段を降り、開かずの扉の前に行った。すると、開かない筈の扉が全開していた。しかし、外からだと、中が神々しく光り、直視する事が出来無い。

「うわっ、目がっ」

 背後を向き腕で目を覆う。

『早く入れ!』

 目を覆ったまま中に入ると、光は無くなり畳二畳位の狭い空間だった。

 下を見ると、円形の字呪文が描かれていた。

『字呪文の真ん中に立って、目を瞑り、下を向いていろ!』

「は?」

 何が何だか判らないが、取り敢えず、言われた通りに言ってみる事にした。

われの力をなんじに預ける。ザラキエルの名を通し、太陽系、第三惑星を救え』

 言い終わると、和人の体が赧く光り、この世の中ものとは思えない程の体験した事の無い熱さが身体中に襲って来る。

「ゔぁああ!! グっ、アァガガッッ!!」 

 うめき声と言うより、猛獣の鳴声の様な声を出す和人。

 消え逝く視界に薄っすら響子の姿が見えた。恐らく和人の声で起きて来たのだろう。

「ぎ、き、きょう、こ............」

 そのまま記憶は消えていった。




「..................いい加減目を覚ましてよ......前みたいに笑っておはようって言ってよ......なんで、なんで和人君まで......」

 少しずつはっきり聴こえて来る。

 その声は間違い無く響子の声。

 段々と和人の意識が戻って来る。

「今まで生きて来れたのも和人君がいたから、いつでも和人君は私の側に居てくれた、それがどんなに心の支えになったのか......」

 和人はゆっくりと目を開けた。

 霞む目に見えたものは、響子の顔だった。

 響子は和人の顔を見て、大粒の涙を流し、抱きしめ、号泣した。

「やっと、やっと目を覚ましてくれた。遅いよ、遅過ぎるよ!」

 和人はあれから、植物人間状態に居た。

 その事実を知った瞬間、和人は今までの出来事が頭の中で過り、そして、その一年と二ヶ月間、響子は一体どれ程不安だったのか、どれ程号泣したのか、推測ではあるが、その事が頭から離れない。

「ごめん。本当にありがとう」

 和人の言葉には真に迫り、嘘偽り無く、響子への感謝に満ち溢れていた。

 響子は一年以上、ずっと、毎日、和人がいつ目を覚ましても良い様に、手足や顎を動かし、ストレッチをしてくれていた。

「和人君。お帰りなさいっ」

 この時の、頬に涙を垂らしなが咲う響子。和人は一生忘れないだろう。

 抱きしめながら口付けを交わす。

 響子と和人、共に初めてのキスであった。

「で、体の調子はどう?」

 和人は額に手を当て、呪文を唱える。

「メディカルチェック」


とは

 自分自身にのみ出来る点検呪文。自分のLEVELやHP、MP、罹っている病気や、身体変化などが脳内に画面として映り出す呪文。


三嶋和人 LEVEL300

HP 999.999.999

MP 999.999.999

身体異変......特に無し。


「き、き、響子!!!???」




 これが、和人がLEVEL300を手に入れた理由だ。

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LEVEL∞の『神』 @ieie0805

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