宝箱
リエミ
宝箱
その宝箱は、地中深くから見つかった。
恐竜の骨を発掘している人が、発見したのだった。
かなり大昔のものと思われた。
しかし、どこにも傷はなく、真四角で、開け口もない箱だった。
何の物質でできているのか分からない。ただ木ではなく、鉄でもなく、プラスチックでもなかった。
でも振ってみると、中でコロコロ、音が鳴り、何かの入れ物だと検討されて、それは宝箱と呼ばれるようになった。
まず、X線レントゲンを通してみたが、表面に特殊加工がされてあるのか、何も中身が写らなかった。ただ四角い、形だけ。
続いてナイフ、のこぎり、電動ドリルなど試してみたが、まったく歯の立たないものだった。
傷さえつけられないと知って、熱ではどうか、ということになり、燃やしてみた。
中の宝物に燃え移らないか心配だったが、無事だった。
というのも、宝箱自体、焦げ目もつけられないからだった。
軍隊に協力を依頼し、爆薬を使った。
宝箱はびくともしない。
何トンもの重りを落としても、割れない。
こうなると、どこかの国の秘密兵器だと指摘する者も出てきた。
そこで国は、核兵器に着手した。
最後の手段だった。
核爆弾を宝箱に巻きつけて、衝撃で開けようとしたのだが、それもものともしなかった。
宝箱への執着心は、それにより誰もが諦めへと、変わらせざるを得なかった。
現代の力を持ってしても、開けられないのだ。
宝箱は第一発見者の手に返された。
骨の発掘人だ。
彼は宝箱を振ってみた。コロコロと音がして、それが何なのか惹きつけられる。しかし、分からない。分からないことへのイラ立ちが募る。全世界の人がそうだった。
これは人類で最も危険なものだ、と指摘する人もいた。何なのか分からない、それ以上に危ないものなどない。
恐竜発掘人は、宝箱を封印することにした。
また、地中深く埋めたのだった。
その、遥か先の世界で、宝箱はまた発掘された。
人々の歴史から忘れられていた頃の話だ。
その人々の生きる時代で、宝箱はすんなり開いた。
中から、コロコロと何かが転がり出てきた。
真四角の箱だった。
振ると、カラカラと音がする。
人々は、これは宝箱だ、と言った。
そして開けようとしたが、ぴくりとも、しなかった。
彼らは封印することにした。また埋めたのだった。
また、遥か先の世界。宝箱は開かれた。
箱から箱が出てきて、その箱も振ると音が鳴る。
人類が生きてゆく中で、必要なものだ、と誰かが言った。
宝箱は探究心だった。それなくしては、人間が動く力にはならないという。
人間の生きるすべての原動力は、探究心からなるもの。そういう想いを未来に残そうと込められた、これは心の宝箱だ。
結局、そんな考えで締めくくられた宝箱は、果たして人類の大いなる宝なのか、違うのか、今も謎を残して、どこかの地中に埋まっている。
宝箱がある限り、人間は生き続けているのかもしれない。
人類滅亡を阻止する秘密を知っている、宝箱なのかもしれなかった。
◆ E N D
宝箱 リエミ @riemi
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