第3話

「また告白したのか?」


 呆れ声で語る少年は輝樹の友人の日陰。

 ごくごく自然な彼の意見に当たり前だろ? と言いたげな表情で答えるのが件の問題児輝樹である。

 彼は一週間、毎日毎日告白するだけでは飽き足らず。

 拒絶の言葉を聞く耳持たず、百花の怒りの言葉すらも心に刺さることなくどこ吹く風で本日六度目となる告白を決行しようとしていた。


「流石にやめとけ、嫌われるだけならまだいいがお前ストーカー被害とか出されたらやばいぞ?」


「俺はストーカーじゃないぞ? 付きまとってはいないしただ手紙を出して告白しているだけだ」


「何回断られても告白している時点で相手が恐怖を感じれば、この世の中訴えたもの勝ちな風潮があるんだぞ? おまえの手紙も捨てずにとって置いていたら本当に勝ち目が」


「俺の手紙を大事に」


 友人の心配の声をいつものごとく受け流し。

 自分に都合のいい部分だけを聞き入れる輝樹にさすがの日陰も怒り心頭であった。


「俺はお前の友人として、心配なんだよ! 今まではなんだかんだ言いもって、一度フラれたら次に言っていたから良かった。だが今回の執着はなんだ? 相手の気持ちを考えないのはいつものことだが、せめて人の話くらい聞けよ! 俺ら友達だろ?」


「あぁ日陰は俺と腐れ縁の親友だ、だからそうやって俺を励ましてくれてんだろ?」


「どう聞いたら俺が励ましてるってとれんだよ! 本当にお前は頭がおかしいよ」


「だって今言ったじゃん、いつもは一度フラれただけで次に行っていたが今回あh執着するようにして何度もアタックしているって。それは俺が本気だから挫けず向かっているってお前が認めてくれてるから出た言葉なんじゃないのか?」


 輝日はいつも人の話を自分に都合がいい風に解釈する。

 だが今回に限っては彼の言い分は一理ある。彼のかつての行動をよく知っている日陰がそれを身に染みて理解しているため、この発言に対する否定の言葉が出てこない。

 ある意味輝日は初めて恋をしているのかもしれない。

 今までのうわべだけの恋とは違い、何度も何度も断られ、受け入れられずとも向かい続ける。

 相手に嫌われてでも好きと言う思いがあるからこそできる行動。

 これを恋と呼ばずして何と呼ぶのか。

 日陰の脳にチラッとよぎった思考は輝日に汚染された変わった思考だった。


「そうかもしれないが……」


「な? だから応援してくれよ」


「あ、あぁ……」


 最後の防波堤であるはずの日陰も輝日との付き合いが長いせいか、少し倫理観、常識がねじ曲がり始めていた。

 輝日の思いは確かに恋ではある。

 初めて抱いた感情に戸惑いつつも向き合おうとしている。

 だがその行動に伴ってくる相手の感情を無視した行為は、果たして本当に恋と呼べるのか?

 ストーカーと何も変わらぬ行いだと一般人であれば判断するのだが……

 その一般人が彼の傍にはおらず、居たとしても聞く耳持たない彼は結局同じ道をたどるのだ。

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希望の花 自由気ままなのんびりおじさん @tomitayuuya

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