第2話
輝日は最初の告白から数日間毎日毎日放課後百花を校舎裏に呼び出した。
二度目、三度目は百花も現れては何? と問いかけてきていたが、一週間がたったころからはため息の身を返すだけ。
話を聞く体制すらとらない。
それでも毎度呼び出しに応じ足を運ぶ当たり彼女の優しさが垣間見えるのだが、それを何とも思っていない輝日は今日も今日とて告白を行う。
「先輩、僕と付き合ってください!」
「何度告白されても受け入れないって言ってるでしょ?」
「でも好きな人がいるわけでもないんですよね?」
「……え、えぇ」
「なら大丈夫ですね、先輩の気持ちが変わるかもしれないし俺の気持ちは変わらない。だから先輩に好かれるまで俺は告白し続けます」
「はぁ……」
流石の百花も疲れを露わにし始める。
輝日は他人の意見を尊重しない。それがいい風に転がることもあるが、毎度毎度好転するとは限らない。
それが証拠に今押しに押して百花を疲れさせてしまっている。
このままではいくら優しい彼女と言えど呼び出しに応じなくなるのは遠くないのは一目瞭然。
だがその事実に気づかず見向きもしない輝日は彼女の本心を、心労を感じ取ろうとしていない。
「……あなた名前は」
「輝日です、日乃本輝日です」
「日乃本君はなんで私のことを好いてくれているの?」
「美人だからです」
満面の笑みで答える輝日に反比例し百花は凄く疲れた、嫌そうな暗い表情に変わっていく。
幾度となく言われたであろう告白、幾度となく言われたであろう好きな理由。
それをこうも恥ずかしげもなく、堂々と言う輝日にかつて振って来た男性の顔がちらついたのかもしれない。
そんな彼女の感情の些細な揺れを当たり前のように無視して輝日は語る。
「白く美しい肌は穢れを知らず、黒く長い髪は清廉さで純真な大和撫子をほうふつとさせ、黒く澄んだ瞳は見るものすべてを魅了する。俺は先輩のすべてが好きなんです!」
恥ずかしいセリフを堂々と胸を張る輝日とまたも対極に位置する百花は赤面していた。
流石にここまで容姿を赤裸々に褒められたことが無いのか、それとも気色の悪い言葉の数々に怒りが頂点に達し、赤面しているのか。
真っ赤に染まった顔は病的なまでに白い肌をきれいに染め上げる。
「それに」
「もういい!」
まだ続きそうだった輝日の言葉を遮り、背を向け怒鳴るように少し声を荒げて語る。
「貴方も私の容姿にしか興味はないのね! 他の人たちと一緒!! 私帰るわ!」
怒りに満ちた声を聴き、反論することのできない輝日は過行く小さな背中をただ見つめるしかなかった。
「なんて綺麗な声なんだろう。それに先輩の感情が露わになったとこなんて始めてみたかもしれないこれは脈あり?」
やはり輝日は輝日のようだ。
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