希望の花
自由気ままなのんびりおじさん
第1話
古来より男は山に女は川に行く習わしのようなものがある。
それは男が力仕事を女が家事をするということの体現であり、それ以外に何も理由が無いそう思われていた。
だが男が山に登るのは本能の一種。
男は平原を駆けるより山を登ることを望む。その理由は未だ解き明かされていない……
この物語の主人公である日乃本輝日もそんな男の一人である。
「そういえばさ俺……好きな人ができたんだ」
私立開花満開高校に通う輝日は学び舎を共にする友人、草陰日陰に唐突に語り始める。
彼ら二人は幼少のころからの腐れ縁。
幼馴染と言うやつだ。
「どうした急に?」
「いやな、二年の先輩で超絶美しい人がいるじゃん? あの人を一目見た瞬間に恋に落ちちゃってさ」
「あ? あぁ桃園百花先輩の事か? お前も懲りずに高嶺の花ばっかり狙うよな」
日陰の皮肉を聞いてもどこ吹く風の輝日は彼の言葉が入ってきていないのか、無視するように自分語りを始める。
「この学校に入るって決めたのもそれが一つの理由だしな」
この小さな町花咲では有名な話だが開花高校に通う少女が人目を引くという噂が絶えず流れていた時期があった。
中高生の間で噂は広がりネットに流れ、名前の特定や高校の特定まではされなかったものの、それでも少し調べれば人づてに正体を見つけ出すこそは不可能ではなかった。
そうした経緯があり、輝日のおつむでは少し足りないこの開花高校に入るため猛勉強に明け暮れ、今では学力が向上し学年順位中間を維持する程にまでなった。
全てが愛のなせる業と言うのもまた男の性なのかもしれない。
「でその先輩をこの前たまたま見つけちまってから俺は、もう百花先輩の事で頭がいっぱいなわけよ」
「で? また急に告白にでも行くわけ? 絶対断られるぞ」
「いいや今回はなんかいける気がするんだよな」
「そんなこと言ってお前いつも玉砕してるじゃん」
かつてクラスのマドンナ、学園一の美少女、近所の綺麗なおねぇさんと、様々な人に告白するも全て断られている輝日。
それもそのはず相手からすれば輝日の存在は知っていても話したことが無い、その程度の関係性の相手に告白されて受け入れる人間などこの世に存在しない。
だからこそ日陰の言うことは最もなのだが
「ありがとな日陰頑張ってくる!」
人の話を聞かない輝日には応援されているように取れてしまったらしい。
この後どうなったかは言うまでもなく、案の定断られる形で幕を閉じた。
ただ今回の輝日は諦めが悪いのか何度となくアタックを仕掛けることを決意した。
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