第115話 ニャんとアザトい日常生活

 無事我が家に帰ってきた俺達。


 さぁ!楽しみな新居!


 …と思っていたのは数分前のお話。


 俺の目の前には新居はある。


 確かにある。


「…家っていうか屋敷じゃねーか!」


 なんとビックリ以前の家の面影は欠片ほどしかなくなんと豪華で巨大な屋敷が爆誕していた。


 …リフォームとはいったい?


 ガグさん達の謎の技量にお腹いっぱいになりつつも新居に我らは入るのだった。


 まぁ幸いなことに妻達は大きくなったことに驚きはしているものの嫌がってはいない。


「わー!お姉ちゃん!おっきいよ!」


「…ん!…探索する!…」


「…おおきい…」


「がう!いっぱい走れそうだ!」


「はえーでかいっす!」


「ネムトさんお掃除が大変そうですね」


「確かに。ですがこれだけいるのですから協力すればすぐに済みますよツクモさん」


「私もナユタ君のために掃除頑張ります!」


「まぁ最悪どうしてもダメな時は魔術でやれば良いからあまり気にしなくてもよいのじゃ」


 リアクションは個々違えど何だかんだで嬉しそうに中に入っていく妻達とそれに追随するナユタ家ペット。


 そのとき妻達が入っていったことで玄関にあったポストから一枚の紙が落ちてきた。


 この家の間取り図のようだ。


 …35LLDDKKってなんですかね?


「おーい!ナユタぁ!」


 明らかに増えすぎた部屋をどう使うか唸りながら玄関に入ろうとした俺に後ろから呼ばれた。


「運ぶの手伝ってぇ~」


 そこにあったのは何故か死骸と化したツァトグアを担ぎ上げているニャルとチャウであった。


 ニグラスは素知らぬ顔でノートパソコンをいじっている。


 なにしてんの?



 ◆◆◆◆◆



 さて…新しい家の確認を終えた俺は現在ニャルと一緒に買い出しに出ている。


 家が大きくなったって家具や食べ物は増えないからね。


「新しく出たガン○ラが俺を待っている!」


 二十代日本人男性の姿をしたこいつは新しいプラモを買うついでにいるだけです。


 なお何故か俺は妻達に「夜まで帰ってこないでね!」と念押しされた。


 …あれ?新しい家から追い出された?


 …いやいや…そんなばかな…。



 ◆◆◆◆◆


 ――一方その頃ナユタ家では。



「ニグラスよ、探偵事務所で頼んだ件はどうなったのじゃ?」


「問題なく。20人載っても大丈夫な営みベッドは既に寝室に置いてあります」


「……あの……今…9人じゃ?…」


 小さく挙手したミドリの言葉に、何処からか出したメガネを顔にかけたニグラスがくいっとメガネを上げる。


「我が神ならあと10人程なら増えると思い準備しました」


「…ん…否定出来ない…」


 妻達の企みは続く。


 ◆◆◆◆◆


 買い物袋を肩にかけた俺はふと思ったことをニャルに尋ねる。


「なぁニャル」


「ん~?」


「今思うとさ」


「おう」


「ひょっとして、ひょっとしなくても…俺はハーレムを形成しているのか?」


「……えっ?……今更?」


「いやだって…なし崩しで奥さんが何故か増えたし」


「…お前のそうゆうとこ本当に呆れつつも尊敬するよ…」


「ふぁ?」


 たまに皆から注がれる呆れの視線の理由は未だに俺にも分からぬ神秘であった。


 ……あれ?そういえばベルがいないな。


 いつもならアクセサリーになってついて来てるのに。



 ◆◆◆◆◆


 ――方その頃ナユタ家では。


 大人の姿になったリベルギウスがホワイトボードに書いた花の絵でミドリとアヤネとミユキに勉強会を開いていた。


「雄しべ」


「わう」


「雌しべ」


「っす」


「=子供」


「「 おー! 」」


「……………ぁぅ……」


 感動している2人の横で実は性知識を持っていたミドリが顔を赤らめ震えているのだった。



 ◆◆◆◆◆


 商店街のタコ焼きを片手に俺は横をみる。


「…なぁニャル」


「はふっはふっ!なんふぁ?」


「いやさ、今更ながらあんなにも奥さんいて俺はちゃんと幸せに出きるのかなって思ってさ」


「…『ごくん!』どうした突然?」


「考えてもみろよ俺はちょっと魔術使えるだけの一般人だし…」


「ああうん、逸犯人だな」


「仕事にもついていない。

 ある意味社外不適合者だ」


「お金はあるしそもそも普通に働いている人間より社会性あるけどな」


「こんな俺でもちゃんと大切な人達を幸せに出きるのかなってさ」


 割と真剣に俺はニャルの方を見るが、話を聞いていた奴は鼻をほじりながらこっちを変な顔で見ていた。


「それは多分あれだな。考えるだけ無駄!」


「話聞いてた?」


「失敬な!聞いとるわ!

 少なくとも俺の知っている人間は異空間でスマホいじったり、神を撫でたり出来ねぇっての!

 お前は自信もって奥さんと一緒にいればいいんだよ。俺が保証してやる」


「そうかなー」


「そうだよ」


 欲しかった答えは貰えなかったが励ましは貰えたのでまた明日も頑張ろう。



 ◆◆◆◆◆


 ――一方その頃ナユタ家では。


「…うぅー…す、すーすーする…」


「我は元の格好がこれに近かったから違和感はないのじゃ」


「…ん…ちょっと透けているエロス…」


「むむ!お姉ちゃん前よりも胸盛ってるでしょ!」


「…ナユタ…巨乳好き…」


「むー!だったら私も…」


「お二方、ナユタ様は確かに大きな胸が好きかも知れませんがきっとそれだけではないかと」


 姉妹が胸を顔より大きな超乳にしようとした辺りで諌めようとしたツクモ…だったが。


 彼女の後ろで揺らめく尻尾を見た姉妹の目に火が灯る。


「…ん…ナユタ尻尾好き…」


「私まだ尻尾はやしたことない…」


「…はい?」


「「 確保―! 」」


「…ひゃぁー!?」


 真っ暗な着替え部屋にツクモの悲鳴が響くのであった。



 ◆◆◆◆◆



 時は過ぎ買い物も無事完了した俺とニャルは帰路についた。


 といっても帰るのは門で一瞬なんですけどね。


 しかし何故か妻達のから玄関から入ってくるように言われているので室内は自重。


そして玄関に辿り着いた俺は玄関の扉を開ける。


 …そこには!なんと!


 横一列になった妻達が正座でこちらに頭を下げていた。


 しかも…肌襦袢一枚の格好で。


 頭の中に警報がなる。


 …あっこれ…この流れなんか以前に覚えがあるような…。


「「「「「「「「お帰りなさいませ旦那様。今晩はどうぞお相手をよろしくお願いします」」」」」」」」


 困った状態ではあるがついつい見てしまう。


 クロネ、ネムトは以前も見た大人の体を余すことなく発揮し、


 アサトとヨルトも以前と同じ…いや以前よりも成長した大人の姿を肌襦袢に隠している。


 そして今回は新たにさゆり、ミドリ、ミユキ、アヤネ、ツクモがいる。


普段から揺れている凶器を肌襦袢で隠したさゆり。


 少し恥ずかしそうな表情だがそれであの布越しに浮かんだ胸は反則です。


 ミドリは既に倒れても可笑しくない程真っ赤になっているがそれがまた可愛らしい。


 体はギリギリ問題ないくらいの年齢に合わせてあるように見える。


 その次のミユキは意外な程成長した姿になっていた。


 鋭い眼光にスレンダーな大人ボディ。


 綺麗な鎖骨とうなじが目に入ってしまいます。


 …まぁ口からは「交尾!交尾!」と言っているから中身は変わってないけど。


 アヤネは少しだけ大人なった様子で普段の可愛らしいツインテールをほどいて髪を下ろしている。


 そのためか普段よりも大人びて見える姿がとても魅力的である。


 最後にツクモだが流石普段から和服を着ているだけあって絵になる。


 大きな胸も美しい肢体も肌襦袢に合わさって一枚の芸術作品だ。


 …後ろで「ピクンッ!ピクンッ!」としている尻尾が彼女の心境を映している気がするけど。


 そして妻達の艶姿から意識を戻したそのとき、ふと背後の気配に気が付く。


 そこには大人姿かつ肌襦袢のベルが仁王立ちしていた。


 小さな胸張っているから透けた肌襦袢から見えているので少しは隠して下さい。


「逃亡不可」


 何故だろう…強い意思を感じる。


 ……わかるよ?


 流石にここまで包囲網敷かなくても何を要求されているのかは流石にわかるよ?


「ニャル」


「ん?」


「お前たしか徹夜用の精力剤買ってたよな?」


「あー…うん。やるから頑張れ」


 投げ渡された精力剤。


 腰に手を当てて一気に飲み干し妻達のほうへと歩み出す。


「出陣じゃー!」


「「「「「「「「「 おー!」」」」」」」」」


こうして俺は夜の戦いへと消えていくのだった。


 しかしどうか一言残したい。


 …せめて2日に分けて!



 ◆◆◆◆◆


 ――次の日。


『チュンチュン!』


 朝。


 鳥の鳴き声とともに目が覚める。


 爽やかな空気。


 激痛が走る腰。


寝ぼけている頭をかいて今日の予定を思い出す。


「…あー今日は皆と遊園地行く約束だ…」


 ベッドに皆いないからもう既に準備していると言うことだろう。


「ふぁ~…ん!」


 欠伸と伸びを同時に済ませた俺は痛む腰に魔術をかけ起き上がる。


 こんな体の使い方をしていたらいつか軟体動物になりそうだなぁ。


 洗面台で顔を洗い、


 服を着替えて姿見の前に立つ。


 …よし、異常無し。


 確認を終え玄関に向かった俺の目に入るのは…やはりいつもの大切な光景だ。


「あーナユタ!遅いよ!はやくはやく!」


 遅れた俺に頬を膨らませるヨルト。


「旦那様、ご準備はできましたか?」


 いつもの鮮やかな着物姿で笑うネムト。


「まぁ昨日の今日だから辛いのはわかるのじゃ」


 お気に入りの猫パーカーで耳を立てるクロネ。


「先輩!早く行くっすー!」


虹色のツインテールを楽しげに振り回すアヤネ。


「がう!油田地?…に早くいくぞナユタ!」


抱えられたまま嬉しそうに四肢を動かすミユキ。


「ミユキちゃん、遊園地だよ?」


 白いワンピース姿でミユキを宥めるさゆり。


「………………(無言で手を振っている)」


 静かに翡翠の髪を手と一緒に揺らすミドリ。


「ナユタ様~お弁当もこちらに準備してあります」


9本の尾にそれぞれ弁当を乗せ嬉々としたツクモ。


 そしてトテトテとこちらに走り来るアサトが、いつの間にか自然に浮かべられるようになった笑顔で俺の裾をひっぱる。


「…ん!…いこナユタ…」


「はいはい、忘れ物ないかー?」


 当然のようで当然でもない。


 偶然のようで偶然でもない。


 そんな今を見て笑ってしまう。


 分不相応だけど掛け替えのない大切な人達の笑顔を見て、気の抜けた居候達の送りの声を聞いて、俺は玄関を出て確信する。



 ―今日も、明日も、明後日も


 ―今も、今までも、これからも


 ―永遠に我が家は平和です。




 ニャんとアザトい日常生活 ―おわり。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ニャんとアザトい日常生活 -外宇宙ゆるゆる日記- 星光 電雷 @Stern2943

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ