第2321話、【こ◯すば4期決定】わたくし、『ヤンデレク◯スちゃん』爆誕ですの☆

「……ここは一体」




 目が覚めると俺は、見知らぬベッドの上に横たわっていた。




「──ああ、カ○マ、やっと目覚めたの? このお寝坊さんめ☆」


 その時、ノックも無しに部屋に入ってきて、さも親しげに声をかけてくる少女。


 しかしそれは、毎度お馴染みの、めぐ○んでも、ダク○スでも、ア○アですら無かった。


「……ク○ス?」


 いかにも中性的なスレンダーな肢体と、ショートカットの銀髪に縁取られた端整な小顔の中で、いたずらっぽく煌めいている青の瞳。


 そして何よりも、頬に刻まれている特徴的な傷跡は、気さくな冒険者仲間である、盗賊職のク○スその人であった。


「……ク○ス、ここは一体どこなんだ? 何で俺がおまえと一緒にいるんだ? めぐ○んやダク○スたちは、どうしたんだ?」


 そうなのである。


 こうやって、はっきり目覚めた今となっても、




 俺がこんな所にいる『記憶』が、まったく存在していなかったのだ。




「カ○マ、突然何わけのわからないことを言い出してるの? めぐ○んとかダク○スって、『誰』のこと?」


 え。


「……何を……ク○ス……おまえこそ……何をわけのわからない……ことを──」




「それに、あたしとカ○マが一緒にいるのは、当然でしょう? ──だって『この島』で、ずっと前から、『二人っきり』で暮らしているんだから」




 ──⁉




「俺がク○スと、二人っきりで暮らしているって? それに『島』って、何だ?」


「『島』は『島』だよ。一年前冒険者としてのクエストで来たんだけど、居心地が良かったから、そのまま二人で暮らすことにしたんじゃ無いの?」


「クエストって、ここって、ダンジョンか何か有るのか?」


「うん。しかもいろいろと『お宝』が眠っているから、生活していく上で、困ることは無いしね」


「……そんな旨みの有るダンジョンが有るってことは、他にも冒険者が結構な数いるわけか?」




「ううん、いないよ? ここは非常に危険な海域の中にあって、本来なら、悪天候とか、年中荒れた渦潮とか、超危険な海洋モンスターとかに阻まれて、誰も近づけない『未踏破のお宝の島』だったんだけど、この世界指折りの『豪運の持ち主』である、あたしたち『銀髪盗賊団』なら到達できるかも知れないってことで、白羽の矢が立ったところ、いろいろとアクシデントは有ったものの、こうしてたどり着くことができたのさ」




「──そんな劇場版にしたら、『大長編冒険活劇』になりそうなことなんて、全然記憶に無いんですけど⁉」




「ああ、それはねえ、実は君ってこの数週間の間、おそらくこの島の風土病と思われる謎の熱病にかかって、ずっと昏睡状態にあったから、記憶の一部を失ってしまったんじゃないかな?」


「……熱病?」


「うん、だからまだ無理せずに、しばらく寝ていたらいいよ。君の身の回りの世話や、家事全般は、当分の間あたしがやってあげるから」


 そう言うや、食事の用意でもしてくれるのか、さっさと部屋を出て行く、『銀髪盗賊団のお頭様』の少女。


 ……俺が風土病で、ずっと眠っていただと?


 言われてみれば確かに、何だか身体中がだるいし、いまだ意識もぼうっとしていた。


 これが熱病のせいだと言われれば、十分に納得がいく。


 ──だけどク○スに、めぐ○んやダク○スの記憶が無いのは、どうしてなんだ?


 しかも、こんな絶海の孤島で、俺と二人っきりで暮らしていかなくてはならないらしいのに、それを既に完全に受け容れているなんて、彼女らしくは無いのでは?


 ……もしかして、ク○スって、前から俺のこと、憎からず思っていたとか?


 ──いや、それは無い。


 つい忘れそうになるが、彼女は単なる盗賊でも、気のいい冒険者仲間でも、のだ。


 その正体は、この世界において最大の信者数を誇る、『エ○ス教』の御本尊であられる、女神『エ○ス様』その人なのだ。


 もしかしたら、俺になにがしかの好意を寄せているかも知れないけど、女神としての責務を放棄して、二人で一緒に暮らそうなんて、そんな無責任なことをするわけが無かった。


 ──て言うか、そもそも女神様としての本性を現せば、どんな危険地帯からでも、無事に帰還することなぞ朝飯前だろう。


 それなのに現在の状況は、一体どうしたことなんだろうか?




『──ごめんなさい、佐藤和○さん。「ク○ス」がとんでもないことをしてしまって……』




 その時突然脳裏に鳴り響いた声音は、たった今まで一緒にいた少女のものと同じであったが、その『語調』はまったく違っていた。


「え、もしかして、『エ○ス様』ですか?」


『そうです、私の「分身」が勝手なことをしでかして、大変申し訳ございませんッ!』


「……『分身』て、確かにあれは『地上用』に創られた、『ホムンクルス』みたいなものでしょうが、中身は『エ○ス様』そのものなのでは?」


『それがですね、ずっと長いこと「人間の女の子」として行動しているうちに、「ク○ス」として独自の「自我」が芽生えていって、今では完全に「別人格」となってしまい、既に女神である私のコントロールを離れてしまっているのですよ』


 はあ?


「つまり今のク○スって、エ○ス様とは独立した存在になっているってことですか?」


『簡単に申せば、その通りです』


「何でまた、そんなことに?」




『ご存じの通り、そもそも「ク○ス」は、ダク○スの「冒険者の仲間が欲しい」と言う願いを叶えるために、生み出されたものですが、それと同時に私自身の、「ただの人間の女の子になってみたい」と言う願望にも基づいておりました。その二つの目的はほぼ完璧に果たされて、ダク○スは大貴族の令嬢でありながら、多くの冒険者たちと親しく付き合えるようになれたし、私自身も大いに地上の生活を満喫できました。──しかし、それでも私はあくまでも、「人々の営みを見守り教え導くべき女神」なのであって、自分勝手な欲望に溺れるわけにはいかず、一定の「線引き」が必要なのです。例えば「ある殿方」のことを好ましく思い始めても、けして本気の恋心をいだいたりはできません。よって私は常に自ら「心のブレーキ」をかけ続けていたのですが、いつしか「ク○ス」の中では、それに対する「不満」が蓄積していって、ついには耐えられなくなり、独立した「自我」に目覚めて、本体である私との繋がりを断ち切って、己の欲望のままに行動するようになったのです!』




「──その結果が、こんな絶海の孤島での、この俺の『拉致監禁』かよおおおおおお!!!」




『本当に、ごめんなさいッ! 私の和○さんへの好意って、自分で思っていたよりも、かなり大きかったようで……』


「それに関しては、むしろ光栄ではありますが、とにかく助けてくださいよ! 女神様なんだから、どうにかできるでしょ⁉ 例えば自分でお創りになられた、『ク○ス』の活動を停止させるとかッ⁉」


『……それが、できないのです』


「──何で⁉」




『実はク○スがしでかしたのは、「ワールドエンド・スティール」と言う、盗賊職における最終奥義でして、自分の最も「欲しいもの」を、絶対に自分だけのものにするために、自分もろとも「世界そのものと切り離して」手に入れる、究極のチートスキルなのですよ』




 ……………………へ?




「──つまりそれって、今俺がいるのは単なる『絶海の孤島』とかでは無くて、完全にすべてから『切り離された世界』の中で、ク○スと二人っきりでいるわけですか⁉」




『ですので、けしてク○スのことを裏切ったり怒らせたりしないでくださいね。ここには彼女しかいないし、逃げ場はどこにも無いので、下手すると四肢をすべて切断されて完全に自由を奪われて、その後ずっと飼い殺しにされるかも知れませんよ?』




 ──それ何て、『ヤンデレ』⁉




 おいおいおい、これって『好意が芽生えた』なんてレベルの話じゃ無いだろ?


 エ○ス様って、そんなに俺のことが好きだったわけ?


 ──いや、たとえそうでも、嬉しくなんか無いよ!


 だってそれじゃ、今のこの状況はエ○ス様にとっても、『思うつぼ』とも言えるのであって、彼女だって頼りにならないかも知れないのだ!


 ……本当は、この状況を余裕で打開できるのに、嘘をついていないとは、けして言えなかった。




「──どうしたの、カ○マ。さっきから、一人でブツブツ言って」




 気がつけばいつの間にか、ク○スが俺の朝食を持って、部屋に戻っていた。


「あ、いや、ひとりごとと言うか、妄想相手にしゃべっていたと言うか……」


「……妄想相手? それってまさか、『女』じゃ無いでしょうね?」


「へ?」




「たとえ妄想であろうと、あたし以外の『女』としゃべるなんて、絶対許さないからね」




 ──ひいいいいいいいッ!




『妄想』相手に、


 しかも、実は自分自身である、『女神様』相手に、


 ちょっと、しゃべっていただけなのに、




 ──本気でジェラって来やがったよ、この『ガチヤンデレ娘』は⁉




『……と言うわけで、当分の間、「ク○ス」と仲良く暮らしてね♡』




 そんな捨て台詞だけを残して、完全に存在を消し去る『女神様』。




 ……間違いない。




 あの女神自身が、元々『ヤンデレ』だったんだ⁉




 くそう、てっきり『正統派女神様ヒロイン』だと信じて、心から崇拝していた、俺の純情を返しやがれ!







(※次回の解説編に続きます)

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