6.Love in Wartime

二度目の出征の前日、彼は中古市場でウェディングドレスとタキシードを買ってきた。二つ合わせて五千円ほどだった。彼らはそれを着た。ウェディングドレスは少し大きく、タキシードは固かったが問題はなかった。彼女は喜んでいた。

それから彼らはスマートフォンで写真を撮った。何枚も撮った。いろんな角度、いろんなポーズで。

彼女は笑っていた。楽しそうだった。彼も楽しいと思った。彼女はそれが幸せだと思ったし、彼もそう思った。

型の古いスマートフォンの保存領域はすぐにいっぱいになったが、そのたび彼らは他の写真を消して、それから再び写真を撮り始めるのだった。

デバイスを取り付け、ストロボをたいた。多くの写真加工アプリをその場でダウンロードして試した。頰を赤くしたり目を大きくしたり、彼らはいつまでもそれを続けた。疲れてそのままの格好で眠ってしまうまで、彼らはそれを続けた。

ストロボの光がやみ、静寂が訪れ、それからしばらくして彼が目をさますと、ウェディングドレスは大切そうにビニール袋に覆われて、クローゼットの中にしまわれていた。真夜中だった。彼女はどこかに行ってしまっていた。


「メールは見れるはずだし、時間が合えば電話もできるはずだよ」と彼は言った。「大丈夫、すぐ戻ってくるよ」と彼は言った。彼女は何も言わなかった。

彼女はうつむいたまま彼の左腕に触れて、それから撫でた。一度目の出征で弾け飛んだあとに残された左腕の先は、皮膚が張ってつるつるしていた。彼はそれをくすぐったいと思ったが、何も言わなかった。彼は何も言わずに放っておいた。彼女はしばらくそれを続け、やがてやめた。

彼らは駅の改札前でキスをして別れた。列車は予定通りの時刻にやってきて、彼は予定通りの時刻に町を離れた。さよならと彼は言った。さよならと彼女は言った。彼女は手を振った。

列車が走り始めると、彼の姿はすぐに見えなくなった。

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