5.蛍
蛍が飛んでいる。たくさんの蛍が。
一匹の蛍をつかまえ、手のひらに置いて眺めていると、そいつが私に語りかけてくる。
「こんにちは。こちらは私たちのエージェントで、私たちの言葉で「光」と呼ばれている有機生命体です」とそいつは言った。「創世記にある「初めに光ありき」というのはこのエージェントのことを指しています」
私は不気味に思いつつも、そいつを手離すことはできなかった。
そいつは続けた。
「私たちは7千万年ほど前にこの星にやってきて、先住民である人類をベースに、惑星探査用身体を構成しました。その末裔のうちの一人が、今あなたの前にいる私なのです。あなたたちの言葉で神性が宿る、という謂いがありますね。あれは単なる印象などではなく、事実です。2兆年ほど前、現在あなたがたが神と呼んでいる生体は文明を築き、意識の加工技術を発展させました。意識と現象との融合が可能となった神たちは肉体を捨て、無から発生するあらゆる現象と融合し、ある現象が消えては新たな現象に乗り換え生き長らえてきたのです。そのうちの一人が、今あなたの手のひらの中にいる、私なのです」
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