ぺんぺんとらっかせい

リエミ

ぺんぺんとらっかせい


「やあ! ペンギン」


「あぁ、らっかせいくんか」


「きみ、ペンギンのぺんぺんくんでしょー?」


「そうだよ。ぼくはぺんぺんくんだよ。きみは?」


「ぼくは、らっかせいのらっかせいさ」


「うん、そうだね。ところで、何か用なの?」


「ううん。もうさむくなったから、きみが現れると思ってね。待ってただけさ」


「そう、ぼく、さむくなったら出番がくるんだよ。それまでは、氷のあるところにいるんだけどね」


「もう出ていいんだろ? これからは毎日、おそとをあるけるの?」


「うーん、たぶん。ぼく、おじさんがいるんだけどね、そのおじさんがね、ぼくの氷づけのオリをあけるんだよね。そしたらあるいてもいいってことなんだ」


「へぇ。ぺんぺんくんはピーナッツはたべる?」


「たべないよ」


「あぁよかった。じゃあ、一緒に今日はあるこうね。こっちだよ」


「どっち?」


「どっちって、ぺんぺんくん、きみ、いきなりひどいじゃないか!」


「どうしたの、らっかせいくん」


「どうしたのって、足を上げてよ! ぺんぺんくんたら、ひどいや。いきなりぼくを踏むなんてさ!」


「えっあっ、本当だ。ごめんね、らっかせいくん」


「もういいよ。ぺんぺんくんなんてしらない。ふんっ!」


「らっかせいくん……」




「どうしたんだい、ぺんぺん」


「あっ、おじさん。あのね、らっかせいくんがさむくなってきたから、ぼくを待ってたから、一緒にあるこうとして、ぼくが踏んづけちゃったの」


「それはいけないね、ぺんぺんがあやまりなさい」


「うん……らっかせいくん、ごめんなさい……」


「しらない、しらないっ」


「おじさん、らっかせいくんは、まだしらないしらないをやっているよ」


「それはいけないね。ぺんぺん、もう一度あやまりなさい。ちゃんと頭を下げるんだよ」


「うん。らっかせいくん、ごめんなさい、ぺこり」


「わーん。うわーん」


「おじさん、らっかせいくんは泣いちゃったよ」


「それはいけないね」


「おじさんはいつもそれはいけないね、だね」


「それは……しょうがないね。ぺんぺん、今日はらっかせいくんはかわいそうだったから、明日はかわいそうをやめて、たのしく過ごすんだよ」


「うん、それじゃあね、らっかせいくん。また明日はしらないしらないはおわりだからね。お願いだよ」


「わーん。ぺんぺんくん、それじゃあまた明日、待ってるんだから、ぜったい踏むのやめてよ。じゃあね、ぼくはかえる」


「うん、またね」


「さあ、ぺんぺんも今日はかえろうね」


「うん、ぼくかえろう」


「つかれただろう、ビタミンをとるために、エサにピーナッツを混ぜとくからね」


「うん、ぼくつかれたからピーナッツを食べる」


「先にかえりなさい。おじさんはらっかせいくんを送ってから、ピーナッツを持ってかえるからね」


「わかった」


「さようならを言ったかい?」


「さようなら、らっかせいくん」


「さよなら、ぺんぺんくん」


「さようなら」


「さよなら」


「さようなら」


「さよなら……」



 その後、ぺんぺんとらっかせいが再び出会うことはなかった。




◆ E N D

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