STEP4 物語の本質




 物語というのは何を語るものなのかを考えたことはあるだろうか。

 ただマンガを見るだけ。小説を読むだけ。アニメを鑑賞するだけの人間はそんなことを考えない。ただ面白いかどうかだけだ。

 しかし、物語を作る人間はそれを意識しなければならない。そうでなければ物語を物語とする意味がなくなってしまう。


 STEP4では、STEP1からSTEP3までで解説したもの全てを応用した最後の基礎である。

 今回はその全ての解説を取り入れた上で、物語とはどのようなものを指しているのかを解説していこう。


 さて、改めて問おう。

 諸君らは物語とはそもそもなんだと考えるだろう。

 随分とふわふわしたようで、直結した問いであるが、これに回答できるものはいるだろうか。

 物語を作る者は、これを説明出来なければ話にならない。とはいえ、たったの一言でいい。一言答えられればそれで物語の本質を理解出来たといっても過言ではない。


 ではいくつか例を出して物語を語っていこう。


例1

 人々から嫌われる少年。里の長になるという目標がある。しかし、忍者学校ではドベの成績。卒業試験の課題も、一番苦手な分身の術。

 事件が発生し、それを解決する手段として、禁術の書に書かれていた影分身の術を努力で習得し、忍者学校を卒業する。忍者としての第一歩を踏み出す。


例2

 女の子の水着を想像するだけで爆発しそうなくらい赤面してしまう少年。

彼には同クラスに好きな女子がいた。しかし、少年は遠目から彼女を見つめることしかできないでいる。

 そんな少年の前に表れた一人の美少女宇宙人。

 彼女を攫おうとする黒いスーツの男らが現れ、少年は彼女を助けようと行動する。

 しかし、実は彼女は家出をしただけで、黒いスーツの男らは彼女を家に連れ戻そうとしていただけだった。

 少年の言動を目の当たりにした美少女は少年に惚れ、同居することを決意。それをきっかけに、少年の周りではドタバタな日常に巻き込まれることになりながら、好きな女子との関わりを持つようになる。


 例3

 交通事故の影響で、高校デビューをしたのが三週間遅れてしまった少年。既にグループ形成は完了している時期、その上、人と関わるのが不得意な点もあり、ぼっちを貫くことになってしまう。

 そのことになんの不満も持っていなかった少年だが、担任の教員の強引な勧誘によって『奉仕部』に入部させられる羽目になってしまう。

 奉仕部に元々いた少女Aと、ボッチの少年。二人で悩み相談のようなことをすることになった少年。それはどれだけ奉仕活動ができるかを競い合うことなる。勝者は敗者に何でも言う事を聞かせることが出来ると教員は条件つけた。

 そんな奉仕部に相談しに来た一人の少女B。彼女は所謂リア充というやつである。

 彼女は手作りクッキーをある人に渡したいが自信が無いということで、協力を求めてきたのだ。

 少女Aがレシピどおりにクッキー作りを教えていたが、何故か少女Bのクッキーは黒焦げになってしまう。どうしたものかと悩む一同に、少年の手腕が発揮する。

 結果、少女Bは美味いクッキーを渡すことより、努力してクッキーを作る姿勢に気持ちを切り替えることにしたのだった。



 ここまでで例を三つ上げてみた。既存の物語を一例に出しているため、どの作品か心当たりのあるものもいるだろう。

 全てが違うジャンルの物語であるが、1つ1つ解説しながら物語とは何なのかを説いていこう。


 まず一番シンプルでわかりやすい物語構成なのが例1である。

 主人公のわかりやすい目標、目的、不満を記しながら、それを解決していく物語。

 最初は嫌われる一人ぼっちの立場だったが、努力していくにつれて人々に認められるようになった。


 次にわかりやすいのが例2。こちらも恋愛ものとして純粋に好きな人と付き合いたいという目標があった。

 しかし、宇宙人の美少女と出会ってからドタバタな日常に巻き込まれるようになった主人公。その過程で遠目から見つめることしかできなかった好きな人と関わりあいになるようになった。


 そして、物語を理論として語るのに少し複雑なのが例3。

 まずSTEP1で解説した不満、目標、目的を主人公は持っていない。ぼっちであることに何ら不便を感じていないのだから当然といえる。

 では、不満、目標、目的を持っているのは誰か。

 同じ奉仕部の部員である少女A。彼女も三つの要素を序盤では明かしていない。

 ここで三つの要素を明かしているのは相談をしに来た少女Bである。

 ここからが複雑な解説になってくるのだが、STEP1で解説したもの不満、目標、目的を持つのは視点キャラだけではないということである。

 奉仕活動の競い合いがこの物語の本質ではない。

 この物語の本質は、主人公や少女A(以下からヒロインと称する)の日常を描くものではなく、奉仕部に相談しに来る少女Bの相談をどのように解決していくか。少女Bの不満、目標、目的をどのように扱っていくかを描くのがこの物語の本質。

 ここが例3を複雑にしている要因だ。

 主人公(視点キャラ)でも、ヒロインでも持たない三つの要素。それを持ち込んでくるのは相談しにくる少女Bであること。敢えていうならそれを解決するのが主人公らの目的であるといってもよい。

 相談者によっては行動する指針が変わるのだから、例1、例2と比べると物語に一貫性がないといえる。



 ジャンル、物語構成が丸っきり違う三つの物語だが、この中でも共通した要素がある。

 例1、例2では主人公(視点キャラ)が。例3では相談者である少女Bがそれにあたる。

 どちらも不満、目標、目的を明記してあり、それを解決、もしくは改変している。

 つまり物語の本質とはそれだ。


 視点キャラ、あるいは特定のキャラの持つ不満、目標、目的を変化させていく。

 それが物語の本質である。

 嫌われ者が認められるようになり、遠目で見つめるだけの好きな子と関わるようになり、人に頼ってクッキー作りをする少女が自分の力でやろうと決意する。その行程を記したのが起承転結である。


 例えばニートの青年がずっとニートのまま変化のない日常を描くだけの物語は実際に存在する。可愛い美少女の変わらないゆるい日常を描くものも存在する。

それはストーリーではなく、日常やコメディであるといえる。しかし、日常でもコメディでも、どこかで必ず不満、目標、目的が発生して変化が発生するもの。ずっと同じだけの日常を描いても、読者は『何をしたかった』と疑問に思うだろう。可愛い美少女が出るだけで、なんの変化もない物語は無いと言っていい。


 漫画編集者の方に言われたことがある。

 物語の序盤と結末で、必ず変化がなければならない。それは世界規模の話ではなく、人の考え、立場、状況をさしている。

 という風に、物語を考えるにあたって変化をもたらすことはとても重要であるといえる。


 STEP4

 物語の本質。それは変化を記したものである。


 STEP1からSTEP4までの解説が物語理論の基礎である。

 次回からはコメントから質問が来た場合、もしくは自分が気になったものを中心に応用編という名目で更新していく。

 応援コメント、Twitterでメッセージやリプライなどで質問してくれれば、可能な限りお答えする。内容によっては俺の物語理論で解説していくので参考にしてほしい。

 そういうわけで次回からは更新未定である。

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俺の物語理論 尾裂狐 @osakiyudai

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